「か…勘違いって何を…」
「強いて言うなら…最初から全部、かな。」
「全部…?」
「そう、全部。」

彼に触れている所がやけに熱くて心臓が早鐘を打つ。それに追い討ちをかけるように彼は「心臓、速いね。意識、してくれているのかな?」なんて言うから顔まで真っ赤になってしまう。

「ごめん、そんなに固まらないで。」
「…私をからかう為に引き留めたの?それなら、」
「違うよ。」
「……。」

「じゃあ、」と言いかけた所で猿飛くんの私を抱き締める力が強まった。

「こんな事、してるのに…分からないの?」

その時、初めて猿飛くんが震えているのに気がついた。

「…、猿飛くん、震えてる?」
「…、震えてないよ。」

暫しの沈黙が二人を包む。先に沈黙を破ったのは佐助だった。

「あの、さ。真面目に聞いて欲しいんだけどね。」
「…うん。」

一つ大きく深呼吸してゆっくりと告げる。

「深零ちゃんの事が、好きです。」

顔が情け無い程赤く、熱くなるのが自分でも分かる。それを隠すようにさっきよりも強い力で深零ちゃんを抱き締めたら、くぐもった声で「くるしい、」と聞こえたから慌てて力を弱めた。

「猿飛くんは、私に答えを言わせないで殺すつもり、だったの…」

息も絶え絶えにそう言うと彼女は一拍置いて言った。

「私も、猿飛くんが好きです。」








果たして、こんなにも平凡な私が、こんなにも非凡な人、猿飛佐助の彼女になんて、なってしまって良いのだろうか。答えは判らない。
だから、終演のその幕が降りるまで、

平凡に暫しのお別れを。



(終演の幕なんて俺様が下ろさせない。)

だから、









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「見えない臓器の名前は」
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