「ごめん…かすがが、待ってるから…離して、くれる？」 徐に携帯をブレザーのポケットから取り出し、何処かへコールし始めた佐助。 「あ、もしもしかすが？深零ちゃん借りるから先に帰ってて。え？あぁ、分かってる。約束するさ。」 そういえば二人は幼なじみだったな、とかいつの間にかさっきまで居た二人が居ない、とかそんな考えは頭の中に無くて。ただ、何で？という疑問が頭の中を支配していた。 「なん…で…」 「言ったでしょ？話したい事がある、って。」 そう言って携帯をパチン、と閉じた彼の瞳に映るのは確かな決意。 「わ…私は、話したい事なんてない、よ…だから…」 離して、言うはずだったその言葉は何処かへ消えてしまった。 何故なら、彼女は彼の腕の中に捕らわれたから。 何故なら、彼女の口は彼の胸に押し付けられてしまったから。 何故なら… 「ごめん、行かないで…」 …そう言った彼の言葉がとても哀しかったから。 「なんで…」 「深零ちゃんは、きっと、勘違い、してるんだよ。」 「勘違い…？」 ―――あいつは…佐助はちゃんと、やってるだろうか。ちゃんと、深零に想いを、伝えられたのだろうか。 「…、大丈夫だよな。」 あんなにも確かな想いがあるのだから―――。 あんなにも確かで――― (真っ直ぐな、気持ち) 伝わると、いいな。 二人残した校舎を振り仰ぎ見た。 |