「あの…」


やけに口の中が乾燥していて声が喉に貼り付いたけれどなんとか言葉を発する。


「ハイ。なんですか、深零。」
「なん、で…空を飛べるんですか?」


暫しの沈黙の後、彼は軽く口を開いた。


「それは、ボクが悪魔だからです。」


あくま、アクマ、AKUMA、…悪魔?
『あくま』、と言う言葉を頭の中で出来るだけ思い浮かべたけれどわたしの知っている『あくま』、は悪魔だけだった。


「悪魔、なんですか。」
「ハイ。そうです。悪魔です。」


まるで名前を訊ねられてハイ、と返事をする様な軽さで言うものだから、悪魔が架空のモノだ、と言う考えがわたしだけの固定観念の様な気がした。


「初めて見ました…」
「何をですか?」
「…、悪魔を、です。」
「そうですか。別に、珍しいモノではないですよ。」


アマイモンと名乗った彼は表情を一切崩さずにそう言った。






あくまのひと






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