「?佐助?」 休日、暇だったので佐助の家に遊びに来た。しかし、いくら呼び掛けても返事がない。おかしい、と思い玄関のノブを捻ってみた。すると、予想していた手応えが無くノブが回ってしまった。 「……さーすーけー?」 間延びして呼んでみても家の中はシン、と静まり返っている。 「…お邪魔しまーす…」 勝手ながら上がらせてもらう事にした。佐助の部屋に行くべく階段を上る。 「…まさか、倒れてたり…しないよね?」 嫌な予感に嫌な汗が背中を滑り落ちる。 「あ、ここだ。」 何度か来て見覚えのあるドアの前で立ち止まる。 コンコンッ… 少し控え目にノックをしてみたが反応は無い。 「失礼しまーす…」 そろり、と部屋に入る。そして目に飛び込んできたのは床に有る橙色。一瞬、倒れているのかと思ったが、そうではない。寝ているのだ。 「…一瞬ビックリしたじゃない…」 その時、一本の油性マジックが目に付いた。目の前には無防備に眠っている佐助。これは… 「…悪戯、するしかないでしょ。」 思い立ったが吉日、好奇心旺盛な深零にはまたとないチャンス。 「恨むんなら無防備に寝ていた自分を恨んでね、っと。」 キュッキュッと音を立ててマジックが顔の上を滑っていく。 「ふふふっ可愛いネコヒゲ出来上がり!…お邪魔しました!」 「?佐助から着信だ。もしもーし。」 「もしもーしじゃないでしょっ!?」 「あははは、どうしたのかな、佐助くん。」 「俺様の顔に落書きしたでしょ!」 「チッチッチッ、無防備に寝ている君が悪いのだよ。」 「なにそれ理不尽過ぎるでしょうが!これからバイトなんだけど!これ、落ちないんだけど!」 「…ばいばいっ!」 「あ、ちょっ…」 (明日、怒られるかなあ…。) 白河夜船 しらかわよふね(ぐっすりと寝込んでいて何が起こっても気が付かない事) |