「はぁ!?旅行!?なにそれ、俺様知らないんだけどっ!?」 「だって言ったら反対するじゃない!」 「………しないよ!」 「なによ、その間は!?反対するんじゃない!」 事の始まりはほんの10分程前。かすがと内緒に計画を立てていた旅行が佐助にバレてしまったのだ。 「深零ちゃんは俺様よりもかすがを選ぶのっ!?」 「それとこれは話が違うでしょっ!?」 深零にベッタリな佐助がそれを許すはずが無く、現在の口論に至る。 「俺様は深零ちゃんに一日でも会えないのがこんなに嫌なのに深零ちゃんはそうじゃないって言うのっ!?」 「そ…それは…」 「よし、じゃあ俺様も一緒に行く!」 「それはダメっ!じゃあ、行ってくるからね!」 バタン、と閉じられた扉。 「なんだよ…深零ちゃんのバーカ…」 「…猿の所に早く帰りたいと顔に書いてあるぞ、深零。」 「えっ、そんな事無いよ!」 「…お前は嘘が下手だな。」 「…そんな事、無いよ…」 喧嘩して飛び出してきたため、会いたくないという気持ちもあるが、それよりも早く会って謝りたい、という気持ちの方が大きかった。 「私は体調が優れない。」 「…は?」 「私は体調が優れないので今から帰る。深零は残るのか?」 それがかすがなりの優しさだと気付いたが、あえて気づかぬ振りをし、ただ、御礼だけを言った。 「何故、礼を言う?」 「ふふふっ、何でもない。ありがと。」 「…ふん。」 「ただいま。」 一日振りに帰ってきた我が家は、我が家だった。うん。当たり前だ。 「…深零ちゃん…」 「あ、佐助…」 さすけのけ、の文字を発音するかしないかの所でガバリ、と抱きつかれてよろけた。 「ちょ、なに、佐助っ!?」 「会いたかった…!!」 「一日会わなかっただけでしょ?」 「うん。だけど、それでもっ…深零ちゃんに会わなかった一日は凄く長かったっ…!!」 涙目でそう訴えてくる佐助。出かける前の威勢の良さは何処へ行ってしまったのやら…。だけど、 「うん。私も、だよ。」 そう言わずにはいられなかった。 一日千秋 いちじつせんしゅう(一日会わないだけで随分会わない気がする事) |