あの人が帰ってこなくなってから幾らの月日が経ったのだろう。しかし、私には其れを確かめる術が無かった。幾ら日が昇っても、幾ら夜空に星が出ていても私には其れが見えない。 あの人が帰ってこなくなって一ヶ月が経ったその頃、突然、見えなくなってしまったのだ。 何故見えなくなったのか、と医者に聞くけれど、医者は皆揃って原因不明と言う。それからは狂った様に泣き叫んだ。それは侍女達が恐れ、近付かなくなるほどに。 しかし、それも最初の7日間だけだった。7日間狂った様に泣き叫んだら絶望の果てに諦めが見えてきた。諦めてみたら、簡単だった。 「直ぐに帰るって言ったのにね。嘘吐き。」 そんな事を呟いても言葉は空虚に消えるだけ。返事をする人など誰も居ない。ただ、虚しいだけなのにね。 「…ばか、」 枯れた筈の涙が零れ落ちた。 「…深零ちゃん、泣いてるの?」 起きることの無い、その小さな白い身体に呼び掛ける。俺様が任務から帰ってきた時には既にこの状態だった。 俺様が任に出てるときに、襲われたんだってさ……全く、おかしいよね。人を殺めてる時は無情なのに今はこんなにも動揺しちゃって… 「お願いだよっ…目を、あけてっ…」 真田忍隊の長がこんなに泣いてる所なんて見れないよ?今、目をあけたら見れるんだよ?だから、目をあけてよっ…。 瞳と心を閉ざした少女の為に狂った様に泣き叫ぶ、忍の姿は何と滑稽だったでしょうか。 阿鼻叫喚 あびきょうかん(苦しく泣き叫びたくなる状態) |