「あ、佐助。」

数時間ぶりに会った彼は満身創痍な私を見るとそれはそれは目をこぼれんばかりに見開き口を何回かぱくぱくとさせた後、そのままフリーズしてしまいました。

「?もしもーし?佐助さーん?」

何度声をかけても顔の前で手を振っても何も反応を示さない佐助に深零は些か不安を覚えた。

(え、あれ?やばい…?)

自分は何か拙い事をしてしまったのだろうか。ならばこの場に居るべきではなく、今すぐに逃げるべきではないのか。そう思った深零は進行方向をくるりと180度回転させ、一目散に逃げようとした。

「え、あれ?」

が、佐助に右腕をがっしりと掴まれてしまった為、それは叶わなかった。恐る恐る佐助の方を見やるとそこには先程の間抜けな顔とは打って変わって般若の様な顔を従えた佐助が居た。

「…深零ちゃん。」
「は、はい!」
「その傷は、どうしたの?」
「…へ?」

この世の者とは思えない程恐ろしい顔をした佐助から紡がれた言葉が予想外だった為、一瞬間抜けな声を出してしまった。

「あ、えっと…ちょっと転びました!」

語尾にてへっ、と付きそうな感じに言えば佐助が一気にまくし立てた。

「はぁ!?転びましたじゃないでしょうが!言い方可愛かったけれども!女の子がこんなに傷だらけになっちゃって!深零ちゃんの事は前から馬鹿だと思ってたけどここまで馬鹿だとは思ってなかった!お馬鹿さん!傷が残っちゃったらどうするの!?まあお嫁に貰うのは俺様以外居ないんだけどね!それでも女の子の身体に傷が残るってのは一生後悔するもんなんだよ!?全く分かってるの!?ホントお馬鹿さん!ちょっと!聞いてるの!?」
「は…はい」

なんだか途中にとんでもない言葉を挟まれた気がするけど、聞かなかった事にしよう。

「じゃあ、行くよ。」
「え、どこに?」
「俺様の家。絆創膏の貼り方も、包帯の巻き方も、雑すぎ!手当やり直すから!」
「ええええ!」
「は?」
「すみません、ついて行きます。」

そしてそのまま佐助の家へと強制連行され、お説教(佐助曰く、愛故)を一時間ほど食らいやっとの事で解放されました。もう二度と怪我なんてしない、そう心に誓った。






満身創

まんしんそうい(身体中が傷だらけの状態にあること)



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