お酒を飲むと、
「…………」
頭がふわふわする。
周りの音がよく聞こえなくなる。
体がふらふらする。
ああ、何だか新しい世界が見えます。
辰馬さんに勧められたコップに入っていたのがお水ではなくてお酒だと気付いたのは半分ほど一気に飲んでしまってからだった。そこからはもうふわふわの世界が始まってしまった。
「ちょ、ほんと、反省しちょるきに、すまんすまん」
「てめぇはほんとにらびを酔わせて何しようとしてたの」
「あわよくばナニしようと」
「よーしヅラぁ、こいつの息子切り落とすぞ」
「嘘じゃよジョークじゃよ金時ィィイ!」
辰馬さんの断末魔が聞こえるけどそれも気にならないぐらい何だか良い気持ち。
そっと残りのお酒に手を伸ばしたが、コップに触れる前に高杉君がその手を掴んでいた。
「もうやめとけ、明日ひどい目に合うぞ」
「…………たかすぎくん」
「……もう合ってるか」
あれ、何かおかしいな。
高杉君がいつもよりキラキラして見える。
そういえば坂田君が言ってたっけ、お酒入ってから見る女は2割増しはよく見えるって。もしかしたらそれなのかもしれない、だって何かキラキラしてるもん。
髪は艶々だし、肌も綺麗、黙ってるとちょっと近寄りがたいけどほんとは不器用なだけですごく優しい人だ。
「たかすぎくん」
「あ?」
抱きつきちゃいたいなぁ。
昔は隙をついては抱きついてたけどすぐに離れちゃうんだもんなぁ。
今なら大丈夫かな、かわされないよね。
お酒も入ってるしふわふわしてるし大丈夫だよね、えい。
「!」
「…………あったかい」
「らび、お前……」
高杉君の胸板にぐりぐりと頭を押し付ける。
お酒ってすごいな、全然恥ずかしくないよ。
「お前今何してるか分かってやってんのか」
「んー……」
「聞いちゃいねぇのかよ」
「んー……」
頭の上からため息が聞こえた、瞼がどんどん降りてきて眠気がどんどん襲ってくる。
それでも離れるのが惜しいからきゅ、と腕に力を込めたら高杉君の手が頭を優しい手つきですべる、それが気持ちよくてずっとやっててくれないかなって思っていたら前髪を掻き分けられた。
そしてそこに柔らかな感触。
何が起きたのかよく分からなくて顔を上げようとも思ったけど遅い来る眠気の波には勝てない。
「たかすぎ、くん……?」
「寝ろ」
「……ん、おやすみなさい」
眠りにおちる寸前の彼の顔は、ひどく優しいものだった。
「さてと、死ぬ覚悟は決めたか高杉」
「何でだよ」
「この流れで理由わかんねー訳ねぇだろ、ふざけんな当て付けかこのやろー」
「漁夫の利か、昔からお前の得意技だな」
「てめぇらがこいつを放置してるからだろうが」
「後から構い倒す予定だったんだよ何人の予定狂わせてくれちゃってんのてめー」
「狂わせて正解だろうが」
「良いかららびを離せ、そして寄越せ」
「銀時、てめぇにだけは譲らねぇ」
「ならば「てめぇもだ」最後まで言わせてよ」
うだうだと絡んでくるこいつらの目の前で眠っているらびをより強く抱き締める。
「て、てめぇぇぇえ!!」
「はははは破廉恥なぁぁぁ!!!」
何だかすごく、いい気分だ。
*前 次#