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「ん、ん……」

ちょっと待ってほしい。

今日は新転地に移動して、貯蔵してあった大量の酒を飲もうということで羽目を外して皆飲んでいて、そんな中でもらびはいつも一人水やお茶を飲んでいた。酒は大人になってからだと言う先生との約束を気にしているのか泥酔する奴らの後始末をする癖がついているからなのか酒はいつも口にしない。それで良いと俺は思っていた、どんな酒癖があるのか分からないのに飲ませるのは危険すぎる。
だから今日もお茶を飲んでいた、飲んでいたはずだ。なのに、だ……

「誰だあああ!!らびに酒を飲ませた奴はああ!!」

目の前にいるらびは顔が真っ赤で呂律も回っていなくて、酔っていた。
足元に転がっているコップを拾い上げて匂いを嗅いでみれば、明らかに酒の匂いがする。

「あたま、くらくら、する……」
「あー、らび間違って酒飲んだ?」
「そのようだな…しかも半分ほどしか飲んでないのに出来上がっているぞどういうことだ!」
「弱いんだろ、酒」

高杉はそう言いながら今にも眠りそうならびの頬をぺちぺちと叩く。

「おい、ここで寝ようとすんな」
「あつい…」
「は?」
「あつい」
「………………!らび!待っ…」
「あつい」

同じ事を三回言ったらびに嫌な予感がして手を伸ばすが、その手が彼女に触れる前にらびは帯を自分でほどいた。はらり、と開く胸元。幸いにも全開にはならなかったが肌けた着物の隙間から白い肌が覗いている。しかも高杉や銀時はその姿のらびをガン見していた。

「高杉ィィイ!見るな!見てはいかんぞ!!」
「あ?別に減るもんじゃねぇだろ」
「いや減るだろ!!むしろ削れるだろ!!」
「ヅラ…ここは神様にありがとうっつって黙って見とけ」
「貴様らは武士としてのプライドはないのか!!」
「好きな女前にプライドもくそもあるかよ」
「あるのはムラムラと欲だけだ」
「最低か!!」

ダメだ、この二人は酒も入ってるし欲に忠実になっている。今らびを守れるのは俺だけだ。
その上こんな状態のらびを坂本が見でもしたら……

「おまんら飲んでる「そ〜れ一気飲みだあああ!!」ごふぁ!!」

ちょうど悪いタイミングで来た坂本の顔面に一升瓶を叩きつける。軽く一メートルは飛んだ。
何も見ていないだろう、見てたとしても覚えていないだろう。そしてらびをガン見している2人の頭を鷲掴みにして床へと叩きつける、これで大丈夫だ悪は去った。

「部屋に戻るぞらび」
「…………かつらくん」
「ん?」
「あったかいね……」

ぎゅう、と胸元に抱きつくらび。
彼女を抱き締めたのは遠い昔の事で、その時よりも頭の位置が低く感じるのは気のせいではないだろう。俺もらびも成長しているが、やはり男と女で差は出ていた。触れてみないと分からない、細さや脆さ。彼女をひどく儚いものに感じる。

「らび」
「……ん?」

なくしたくない。
ふれていたい。
はなしたくない。
もっと、もっと……。
心の底から沸き上がるこの衝動は、何だ?

その衝動に駆られるように彼女の頬に手を添える。
ああ、俺も酔っているのかもしれない。
酔っていることにして、触れてしまおうか。
彼女の唇に自身のそれを近付け、ようとした瞬間に悪寒がはしった。

「おいヅラァ……それ以上らびに近付いたらてめぇの【ピーー】ぶち抜く」
「近付かなくてもぶち抜くがな、なぁ銀時」

何でこんな時だけ仲良しなんだ貴様らは。
頭から血なんて流して。あ、俺のせいか。
まだふわふわとしているのか俺の胸元にすりよるらびを見て和む間もなく2人の鬼が襲ってくる。

やはり先生との約束は守るべきだった。

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