ト LOVEル

吉原に到着すると、銀ちゃんの姿。
手を振ろうとしたところで、銀ちゃんの隣に居る美人と目が合う。
少し小走りで駆け寄り、知らない美人に会釈をした。


「悪ィな、呼び出しちまってよ」

「ううん...あの、こちらの方は...?」


申し遅れた。と凛と発する美人。


「月詠でありんす」

「嫁子です。よろしくお願いします」

「ぬ、主が銀時の...」

「えっ?」


いや、何でもない。とつぶやかれ、本題に入ると続ける月詠さん。


「ターゲットの男は、コスプレ居酒屋''小悪魔''の常連じゃ」

「銀時...?ターゲットって?」

「そいや、まだ話してなかったな。浮気調査を依頼されてんだ。そして、今から2人で潜入を試みる」

「はぁ」


吉原って聞いてどんないかがわしい店に連れて行かれるかと思いきや、居酒屋ですんで良かったと安心する。

連れて行かれたのは、お店のバックヤード。あれ?潜入って...


「しっ、特別に裏から潜入出来んだ。何も言わず、コレに着替えろ」


更衣室に詰め込まれ、言われるままに着替えた。


「ああぁああァア!!めっちゃ可愛い!!いや、コレマジでいいよ!!」

「...なんで、従業員に化けて潜入?」


なんだかんだ促されて着替えさせられた私。
てか、なんでナース?


「やっぱ、ナースいいわ。三割増しどころの破壊力じゃねぞ!」

「あの、え?状況が読めないんだけど」

「この店はわっちの知り合いの店でな。働いてくれる事を条件に潜入の許可を貰った」

「ちょっと待ってー!!働く事を条件にって聞いてないんだけど!」

「まぁ、まぁ、従業員だっらターゲットに近づきやすいだろ?」

「帰る」


更衣室に足を伸ばしたが時すでに遅し。


「これなーんだ」

「私の...着物」

「悪ぃな、後でちゃんと返すから」

「死ね、天パぁあぁあ!!!」


お店の人に連れて行かれる私。
オーダーの取り方やら、配膳やらを教わり...って、これ只バイトさせられてるだけ!?
いい着物着て、化粧したのも馬鹿みたい。
ため息を吐きながらオーダーを取りに個室へ向かう。


「お待たせしましたー」


襖を開けた瞬間。
よく知る王子様と、イケメンが見えたので、すぐに襖を閉めた。


「嫁子姉ぇえええ!!!!何その格好!?すげー似合ってまさァ!!!」

「おまっ、こんなところで何て格好してやがんだあぁ!!」


閉めた襖は、無残にもすぐに開けられた。


「2人こそ吉原で何やってんですか?あ、てかヤる前ですか?」

「おぃい!お前キャラ変わってんぞ!!お前の方こそ吉原で何やってんだァ!」

「嫁子姉...旦那みたいなのと一緒になるから、こんなところでバイトするハメになるんですぜィ!金がねぇなら、オレが1時間1万で雇いやす!!」

「いや、そんな力一杯言われても...」


万事屋の仕事を手伝ってまして...と説明すると、少し落ち着く2人。
注文早く!と店員にせがまれ、何にしますか?と尋ねると、総悟がドヤ顔で「嫁子姉で」と言うのでスルーした。

厨房へ戻ると銀ちゃんに男どもに色目使うなよとかなんとかいってくる。
何なのこの男!こんな格好させといて束縛すんのやめてよ!!

銀ちゃんにしろ、総悟にしろ、土方さんにしろみんなに振り回されてばっかりでイライラする。
目の前には、オーダーのビール。
一杯位飲んでもバチは当たらないだろうと、隠れてグラスを空にした。

注文を呼ぶチャイムが鳴ったので個室に向かうと銀ちゃんの言ってたターゲットらしき人物。


「てかよぉ、オレはもう別れる!あんな女とは離婚だぁ!!」

「離婚して私と一緒になる〜?」


すごい言葉が飛び出し、襖の前で身をひそめる。てか、これ浮気決定じゃね?


「嫁は金、金、金、金の一点張り...金が無くてもいいだろうが、幸せならよおぉ!!」

「私なら、愛があればお金なんて気にしないなぁ」


イチャイチャ仕出す二人に、さっきまでのイライラが爆発した。


「馬鹿野郎おおぉおお!!金がないと、生活出来ないだろおが!!」

「え、姉ちゃん誰」

「うるせぇえ!!ひっく、少ない給料でさ、奥さん、やりくりしてくれてんでしょ?」

「う...」


目の前の焼酎に手を伸ばし、ターゲットの隣に座る女を指差す。


「アンタもねぇ、もっといい男見つけなよ。ひっく、不倫なんてするもんじゃないって」

「え、てか、あなた誰?」

「誰でもいいでしょ!ひっく」

「いや、よくないっつか...ここの従業員だよね?」

「私はただのしがないナースよ」

「いや、しがないナースとか、いないからぁ!」

「うるせぇえええええ!!私なんかな....金なし、甲斐性なし、パチンコ、競馬好きの旦那がいんだよ!!もう、本当、家計は火の車なんだよ!家計は、家計はぁああ!!」


わかったから、わかったから飲めよと差し出され、日本酒に手を出す私。


「ねえ、聞いてくれる?私の旦那さぁ、ひっく、こんなところで働かせて、昼間も働かせて...」

「い、いやきっと、旦那も悪いと思ってんだよ」

「思ってたらこんな所で働かせる!?あり得ないでしょ!」

「いや、お姉さん落ちついて...」

「馬鹿野郎!!これは死活問題なんだよ!!」

「...オレ、浮気やめよ」

「私も...未婚の人と付き合おう...」


グラスを置く手が、強くなるのが自分でも分かった。


「だあぁああ!!嫁子、お前酔っ払ってんだろ」


バシッと頭を叩かれ、後ろを振り向くと銀色の毛玉。


「あ、ひっく、、ねぇ、聞いてよ!これ、私の旦那!!」

「え、あ、どうも...」

「始めましてぇ」

「あ、いや、ご丁寧に...って違ぇえええぇええ!!」


バンっと机を叩く天パ。煩いと口を挟んだが、聞く耳持たずだった。


「てか、何!?嫁子ちゃーん?お仕事完全放棄で何飲んでんの!?」

「アンタの稼ぎが少ないからこうやって働いてんでしょうが!!」

「いや、全然働いてねぇから、お前飲んでるだけだから!」

「聞いた?おじさん。どう思うよこの男」

「いや、アンタ...家にしっかり金入れろよ」

「ちょい待てジジイ!!テメェに言われたかねぇんだよ!」


私達があんまり騒ぐもんだから、周りも騒ついてきた。
月詠さんもバタバタ駆けつけ、銀ちゃんを止める。


「銀時!いい加減にしなんし!!」

「あー?うるせぇ!このハゲ一発殴る!てか、オレにも酒ぇええ!」

「なんの騒ぎだ?警察だ」


霞む目をひらくと、またもや、土方さんと総悟。てか、何?この人達なんで吉原にいるんだっけ?


「嫁子姉...もっと飲みなせェ」


総悟の差し出すお酒に手をつける。なんて気が利く子なんだ。嬉しくなり頭を撫でると、また毛玉が騒ぎだす。


「おい、何飲ませてんだあぁ!!つか、オレも撫でられてぇえええ!!」

「へっ、酔っ払った嫁子姉をお持ち帰りしてやらァ」

「このクソガキ!!オレの前で何言ってんだぁああぁああぁ!!」

「このままじゃ収集がつかねぇ。おい総悟、嫁子連れて帰るぞ」

「あぁ!?なんでお前が連れて帰んだよ!!人の嫁に手ェ出そうなんて考えてんじゃねぇだろうな!!」

「あぁ!?お前がちゃんとしてねぇからオレらがケツ拭いてやってんだろうが、ありがたく思え」

「だぁああ!!腹立つ!!」


みんなががちゃがちゃ騒がしいので閉じかけていた目が開く。


「銀時!!お主いい加減にしなんし!せっかく紹介してやったのに、わっちの顔を潰す気か!?」


月詠さんが銀ちゃんを止めようとした瞬間、足がもつれて倒れこむ二人。


「あ〜らら。旦那ァ、浮気はいけやせんぜィ」


銀ちゃんが月詠さんの上にまたがり…手は胸を…。


「いや、違うから!!これはアクシデントだから!!」

「じゃあ…いつまで…」

「本当、本当に偶然こうなっただけ…」

「触ってんだこの馬鹿ぁああぁあああ!!!!」

「あべしぃっっ!!!!」


私は、毛玉をけり倒し吉原を後にした。

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