10000 | ナノ


「この歳になって手繋ぐのはアウトだと思う?」


ナマエはそれだけ言うと料理に箸をのばして食事を再開した。逆に俺は突然意図のわからない質問を出されたせいで箸が止まる。何を言いたいんだ、こいつ。


「……手を繋ぐのがどうしたって?」
「いや、さっき市場行くときにカイトと手繋いでたじゃん?私は別にどうも思わないんだけど普通繋がないのかなあって」


そもそもその普通の基準がなんなんだろうか。食べることに集中しているのか、それとも伝わると思っているのか、何を言いたいのか大事なとこが欠落していてしっかりと伝わってこない。考えるのも面倒臭くなっていつものことかと諦めて食事を再開しようとすると、俺の言葉を待っていた様子もなくナマエは再び口を開いた。


「親子なら普通に繋ぐじゃん?でも私とカイトが手を繋ぐってなるとカップルみたいに見えるのかなあ?」


その瞬間飲み込んだ米が気管に入り、思わず咳込んだ。そんな俺を見てナマエは爆笑しだすし、俺は一向に気管に入った違和感が取れない。未だに小さく咳込んでいる俺を心配したのか、ナマエは少なくなっていた水を注ぎ足した。悪いな、と言いながら受け取れば、へらりとした笑顔を返される。思い切り飲み込めば、冷えた水が喉を通って行くのがわかった。

未だににこにこしたままのナマエは箸を持ってないほうの手を差し出して俺の手も出せと催促してきた。何をするのかと思いつつも手を見せれば待ってましたと言わんばかりに掴まれる。


「……何すんだ」
「例えばさ、こう手を繋ぐのは恋人繋ぎっていうでしょ?」


俺の質問を無視して指を絡めてくるナマエに溜息がこぼれた。食べ難いだろうが、と思いつつも好き勝手やらせていれば人の手を使って何か遊んでいるようにも見える。色んな繋ぎ方を試しているナマエの手は俺の手と比べると第一関節くらい、むしろそれよりも違いがあって、すっぽりと俺の手の中に納まっていた。


「俺はナマエと手を繋いでも手が掛かる子どもを持つ親の心境にしかならないからわかんねーよ」
「は?むしろ逆じゃない?」
「どこをどう考えたらその考えに辿り着くんだお前」


ナマエの返事に真顔で答えれば、親の心境とかカイト子どもいないでしょ!と文句を言われた。お前も子どもいないくせによく言えるなそんなこと。少し不服そうな顔をしているナマエからガッチリと掴まれていた手が少し緩み、その隙に手を引こうとすると再びガッチリと掴み直されてしまった。

トライアル&エラー
絡められた手から抜け出す術を俺は知らない。

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