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ある日突然、二人の男性に好きだと言われた。いや、この場合男性と言うよりも少年のほうが正しいのかもしれないが。当然、私は困った。今まで同時に異性から告白されたことなんてなかったし、そもそもこれが私のモテ期なんだろうかなんて告白されてる最中に考えていた。


「どうしたの、急に」
「好きだから伝えたまでだ」
「告白に急も何もないだろ」


そのストレートな言葉が胸にぐさりと刺さる。どうしてこう恥ずかしげもなく言えてるんだろうかこいつらは。私にとって二人は掛け替えのない仲間であって、一度としてそういう対象として見てなかったのに。


「ていうか二人こそ私をそういう対象として見てなかったでしょ」
「それはナマエが鈍感なだけだろう」
「その鈍さに嫌気が差すくらいにね」


クラピカは手を眉間に添えて溜息を漏らし、キルアはわざとらしく手の平を天井に向け肩を竦めた。その二人の態度が私を馬鹿にしたように見えて少しイラッときたのは内緒だ。

二人がそんなことを言うから今までの態度を振り返ってみたがやはりそういった雰囲気を感じさせることがあったとは思えず面倒臭くなって考えるのをやめた。考えてもわからないんだからいつから好きだったんだろうかなんて考えるのはもっとばかげてる。さて、どうしたものかな。

ふわりふわりとした甘い考えに対して真剣に私を見つめてくる二人の姿が目に入り、どきりとした。その瞳を見ていると、本当に私のことが好きなんだ、と自覚して、いつものようにへらりと笑いながら返事をすることができなくなってしまうじゃないか。やめてくれ、恥ずかしい。


「……二人とも断るっていう選択肢は、」
「だめっていうか、やだ」


我が儘とも言える強引なキルアの返答に、うぐぐと唸る。二人を仲間としか思ってなかった私が突然二人のどっちかを選べだなんて無茶苦茶な話だ。そんなことを思いながら、突然のことだからもう少し時間がほしいと伝えれば簡単に了承を得た。強引な割に返事はいつでもいいらしい。

その日から私の生活がガラリと変わったのは言うまでもない。二人としてはそれが今まで通りだと言うからたぶん、告白によって私が意識してしまったから二人のさり気無いアピールだったり優しさにやっと気付くようになったからだ。しかし私に告白して自分達の気持ちを私が理解しているからさらに行動がエスカレートしている気もしなくもない。本当はどっちなのかなんて、前々からされていたらしいアピールに気付いてなかった私がわかるはずはないけど、今が物凄く恥ずかしいことには変わりなかった。だって今までそんな目で見られてると思わなかったんだもん、穴があったら入りたい…!


「……無理に選べとは言わない。ナマエの好きなようにすればいい」


一人、溜息をついたとこをクラピカに見られていた。あれから数日が経つが私が未だにどうしようかと悩んでるのもあって、きっとクラピカは私には二人を選ぶことができないとわかっているんだろう。たぶんそれはキルアも同じ。だけどもし二人のどちらも選ばずに二人の気持ちを踏みにじってしまったら、今後の関係がぎこちなくなってしまうかもしれないと私は思って、それが怖かった。


「キルアは二人とも断るのはだめだって言っていたが、なんだかんだ言ってキルアもナマエが決めたことなら文句は言わないだろうし、その後の関係がぎこちなくなることなんてないと思う。それは私も同じだ」


だから気にするな。そういって少し寂しげに笑うクラピカは、すごく綺麗だった。

キラキラ星ひとつ
その星が流星へと変わることをまだ私は気付かないまま。

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