2013 | ナノ


「水族館行きたい」


突然何を思いついたのか、テレビを見ていたはずのナマエは俺の裾をくいくいと引っ張ってきた。そういう番組だったのかと電源がついたままのテレビに目をやれば番組は遺跡の特集をしていた。…どこから水族館なんてワードが出てきたわけ?


「でも今日雨降ってるし家の中にいよう?」
「明日も雨だって」


そう言ったナマエはポチポチとボタンを押しながら番組を変えていた。しきりに変わっていく番組を見てみるものの、水族館に関係するような海も魚もやはり何一つ映ることはなかった。ぶつり、テレビの電源を落とした瞬間、先程までテレビの音で掻き消されていた雨の音が聞こえてくる。そこまでひどい雨でもないが、雨は雨、多くの人から嫌われている。だからきっと今日外出する人は少ないだろう。


「また今度でもいいじゃん」
「……やだ、今日がいい」


何でそんなに今日にこだわってるわけ?俺は今日特別何かあったのかと思い出してみるが、これといって特別なこともなかったせいでさらに謎が深まる。ま、理由でも訊いてみればいいか。


「なんで今日がいいの?」
「……雨だから」


その返しに思わず鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になってしまった。雨?雨だからって水族館の中は何一つ変わんないと思うんだけど?ていうか明日も雨だってさっき言ってなかったっけ?次々に浮かんでくる疑問に眉を顰めながら首を傾げる。そんな俺を見て言葉が足りなかったと理解したナマエは、あー…と間延びした声を出しながらバツの悪そうな顔をした。


「………明日だと休日になっちゃうでしょ」
「うん、でもたしか明日も水族館は開いてるはずじゃないっけ?」
「開いてるけど、人が多いもん」


口を窄ませながら言うナマエに、でも雨だから少ないんじゃないの?と言えば、今日のほうがもっと少ないでしょ、と返された。それは確かに。


「そんなに人が少ないほうがいいの?」


そう訊いてみれば少しの間のあとにこくんと頷かれた。理由も言ってくれるだろうかと思いながらそのままナマエの顔をじいっと見ていれば、未だに掴んだままの裾に顔を埋めて耳を真っ赤にしながら、辛うじて聞き取れるくらいの声で言った。


「…人が多いとね、女の子がシャルばっかり見るんだよ」

ずきゅん
何もかも計画してたのってくらい可愛いんだけど、違うよね?

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