クライネスメッチェン | ナノ


「今日からこの子を預かることになった」


嫌な予感がしていたのか、何人かが眉間に皺を寄せてこの場に似つかわしくない子どもを見ていたが、俺がそう説明した途端、この場にいた全員が同じような顔になった。ずば抜けて嫌そうな顔をしている者といえばフェイタンか。まあ、これは大体予想通りだな。


「ちょっとちょっと、なんで急にそうなったの?」
「俺も急に頼まれたことでな」
「てことはその子が次狙う物に何か関係してるとかってわけじゃないんでしょ?」


さすがシャル、返しが早いな。シャルのその言葉に他の団員達もそうだなんでだと訊いてくる。俺に言われても、頼まれた内容を伝えることしかできないんだが。


「これはゾルディックから頼まれたんだが、半年間だけこの子を預かってほしいらしい」
「なんで?ゾルディックならメイドも執事もいるんだから大丈夫じゃない?」
「それが逆らしくてな。食事にうっかり毒盛りそうだし庭に出られてうっかり犬に食べられそうだしとかなんとか」
「だからって蜘蛛に預けるのもどうかと思うけど」
「まあそれには同意する」


確かにそうだ、と思わず笑ってしまう。蜘蛛に子どもを預けるなんてイルミくらいじゃないだろうか。だからといってあいつの周りに預かってくれるような身内や知り合いがいるとは思わないが。それにしても突然俺の部屋に現れたかと思えば子どもを預け説明だけして目の前から消えてしまったイルミには驚いた。あいつあまりにも傍若無人すぎないか?

イルミの依頼者からこの子だけは殺すなと言われ半年間預かってほしいと言われたこと、預かってくれたら次旅団から受ける依頼を一回タダにするということ、とイルミから説明された通りに伝えてみる。何人かは諦めたような雰囲気だが、未だに何人かは不満そうにしていた。もう決定事項だから不満そうにされてもどうしようもないんだがな。


「その日仕事がない奴等が面倒を見る、ということで問題ないな?」
「ちょと待て、団長が頼まれたなら団長だけが面倒見るといいね」
「これは団長命令だ」


そう言うと返事は返ってこなかったものの、フェイタンの盛大な舌打ちが聞こえた。聞こえなかったということにして先程からそわそわと俺のコートの裾を握っている少女に話し掛ける。


「自己紹介は自分でできるな?」
「うん!」


純粋無垢、とはこういう奴のことを言うのだろうか。ここにいるのが史上最凶との悪名高いA級賞金首の集団だと言うのに、向けられた笑顔には怯えも何もなくただ好奇心の色だけが目に見えた。


「ナマエ、5さいです!よろしくおねがいします!」


片手を広げ前に突き出しているがあれは自分の年齢を表現しているのだろうか。ニパッと笑うその笑顔で本日二度目の、この場に似つかわしくないなという気持ちにさせた。

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