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サブマスが小学生、両親捏造



ナマエと初めて会ったのは小学校。初めての教室、初めての席、初めてのきみ。何もかもが初めて。それなのにナマエと横に並んでくっついている机がいやだった。机と机がくっついて、くっついてる部分がまるでぼくとナマエの間に引かれた線のようで、小さい頃のぼくにはその胸のモヤモヤとしたなにかがわからなかった。


「ぼく、クダリ。よろしくね」
「わたしはナマエ。クダリくんよろしくね」


ナマエがぼくの名前を呼んだ瞬間、身体がビリリッて!電気ポケモンから攻撃されたんじゃないかってくらい体の中をなにかが通った。びっくりしたからそのあとぼくより色んなことを知ってるノボリになんなのか訊いてみたけどノボリもわかんないって。なにか病気なんじゃないかってぼくたち2人でわたわたしながら今度はお父さんとお母さんに訊いてみたら最初はきょとんって顔して、それからおかしそうに笑ったの。もしかしてそれは恋の病かな?って。なんだろう、それ。そんな病気聞いたことないよって言えば、体に毒じゃないから大丈夫ってお父さんに頭をぽんぽん叩かれた。毒じゃない病気って、あるの?

それから結局恋の病がなにかよくわからないまま4月から5月になった。先生が今日は席替えしようって言いだして、うれしそうな声といやそうな声が聞こえた。ぼくはどっちでもいいから、先生をただじっと見つめてた。
席替えが終わって、今度はナマエと離れ離れ。なんとなくまたモヤモヤした。またあのときみたいになるのかなって、そう思ってた。だってぼく、病気なんだもん。でも、次の隣の子と机を並べてもいやはじゃなかった。あのモヤモヤした1ヶ月はなんだったんだろうって思うくらい。


「ぼく、クダリ。よろしくね」
「同じクラスだからしってるよクダリくん。よろしくね!」


その子はクスクス笑いながらぼくの名前を呼んだけど、ナマエのときみたいにビリリッてならなかった。いつの間にかぼく、病気治ったのかな?それともやっぱりあれはお父さんもお母さんも知らないすごい大変な病気だったのかな。そんなことを考えながら、ナマエの席はどこになったんだろうって教室をキョロキョロ見渡したらナマエはノボリの隣に座ってた。ノボリの隣で笑うナマエを見たら、今度はぎゅうって胸が苦しくなった。あ、やっぱりぼくの病気って治ってないんだ。


「しんぞうがわるいんでしょうか?」
「わかんない。でも今日むねが、ぎゅうってなった」


苦しかったの。帰り道でノボリに伝えると心配そうに、クダリが大変なんです、とお父さんとお母さんに説明してくれた。お父さんはノボリから説明を聞いたあとに、なんで急に胸がぎゅうって苦しくなったの?ってぼくに聞いてくるから「ナマエがね、ノボリを見て笑ったの。そしたら苦しくなっちゃった」って言ったら、お父さんはまた、やさしそうな顔で笑って、晩御飯を作り終えたお母さんも似たような顔でぼくを笑った。ぼくはこんなに不安なのに、2人していつも笑ってるからちょっとムッとしちゃった。なにがそんなにおかしいの!って。


「お父さんもね、ビリリッてきて、胸がぎゅうってなったことあるよ」


お父さんの言葉にお母さんもうんうん頷いてて、ぼくびっくり。だってお父さんもお母さんもどこも悪くなさそうだし、幸せそうなんだもん。それとももう治っちゃったのかな?だから今は平気なのかも。そんなことを考えてたら今度はお母さんが「今はぎゅうって苦しくなる心配がないの」ってぼくの思ってたことを教えてくれた。お、お母さんってエスパーだったの!?でもよくわからなくて、なんで?なんで?って聞いたら「お父さんがいるから」「お母さんがいるから」って2人とも同じような返事しかしてくれなかった。


「クダリは、その子のことが好きだからノボリに向かって笑うその子がいやだったんだよ」
「どういうこと?ぼく、ノボリもナマエもきらいじゃないよ?」
「うん、そうだね。でもナマエちゃんとノボリの好きは、違う好きで、好きな子が自分以外に笑ってるのがいやだなーって思ったから胸がぎゅうってなったんじゃないかな」


ぼくにはよくわかんなかったけど、ノボリがなるほどって頷いてるからそうなのかも。でもぼく、ノボリもお父さんもお母さんも好きだけど、その好きとは違う好きがよくわかんないよ。でももうぼくの頭の中がごちゃごちゃでいっぱいいっぱいだったから考えるのやめちゃった。ぼくがわかんなくてもノボリがわかってくれてるし、好きならそれでいいや。

好きの境界線

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