狩人短編 | ナノ

just a girlに提出させていただきました(20141020)/女主



靴や椅子、蝶、車、その他たくさん。何かを集めるのが好きな人はこの世界にたくさんいる。 私の好きな子はそのうちの一人で、ちょっと変わった子だ。何を集めるのが好きなのかというと、人体である。そう、人の体。人体収集を趣味にしている時点で一般的にはちょっとという表現はおかしいほど変わった趣味かもしれないが、私からすればちょっとなのでちょっとと表現しておく。


「見てナマエ!」
「なぁに、ネオン」
「ほら、臍の緒!」


ちんまりとしたソレは大層豪華な箱に納められて、価値がわからない私にはなんだか箱が勿体無く思えた。しかし嬉しそうに見せてくるネオンを見ていると私も嬉しくなるし、価値のわからないソレはネオンの熱烈な視線を浴びたことによりキラキラと輝くモノに変わって見える。すごいなぁ、ネオン。私が見る世界をいつだって簡単に輝くモノへ変えてくれる。


「それはネオンの臍の緒なの?」
「違うよ」


まぁ、わかっていたけども。きっと有名な人物の臍の緒をどうにかして手に入れたんだろう。ネオンがどんな我が儘を言おうがネオンのお父さんは素敵な笑顔で二つ返事をくれる。彼女の不思議な能力さえあればお金はいくらでも積むことができるからだ。私はネオンに並んでじっくりと臍の緒を眺めた。この臍の緒、人間誰しもが産まれるとき一緒だというのにどうして大金を積んでまで手に入れる必要があるんだろう。彼女のコレクションはいつもこの疑問を私に抱かせる。有名な人物だから?それだけの理由で?答えはネオンの中にあるのかもしれないが私はそれを覗くことができない。だからネオンが何を感じているのかもわからない。しかしその理由だとすれば私もこの世界に名前を残すほど有名になれば同じくらい価値が出るということか。そのときは無償で私の全てを彼女に捧げると遺書を残そう。


「ほかにはまだあるの?」
「ううん、まだこれだけ。今パパが探してくれてるって」
「そっか。早く見つかるといいね」


半分嘘で半分ホント。早く見つかったらネオンはコレクションにばかり夢中になるから嫌だけど、手に入れたコレクションを嬉しそうな顔で真っ先に私に見せてくれる姿は好きだ。それだけで私は十分満足だし、これ以上の我が儘を私が言ってネオンを困らせるわけにはいかないとわかっている。それなのに今、私が向けられたこともない輝きを宿したネオンの瞳を独り占めしている誰かの臍の緒に対して羨ましいと、妬ましいと思うのはどうしようもない我が儘だった。


「ネオン」
「ん?」
「……やっぱりなんでもない」
「そう言われたら気になるでしょー!」


叶うはずのない願いを抱く自身に苛つくせいで、涙が出てきそうになった。喉まで出掛けた我が儘と一緒にそれも必死に飲み込んで、私が何を言い掛けたのかと問い詰めようとするネオンに私は笑いを返す。


「綺麗だなって思って」


ネオンが、とは言わない。今、目一杯に広がる輝きを、きっとネオンは知らないから言っても理解できないだろうし、彼女は自身の手に持っている臍の緒のことを言っているんだと私にとって都合のいい解釈で済ませてくれるだろう。だから、それでいいと思った。だって、私だけが知っていればいいんだもの。

改めて言おう。私の好きな子はちょっと変わった子だ。彼女は普通の人間に興味を示さない。心を動かしてはくれない。私がどんなに自分磨きを頑張っても彼女の胸でトクトクと動く心臓が私に向かって鳴ることはない。ねえ、どうやったらソレ、もらえるんだろう。

そうだ。いっそ、食べちゃおうか。

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