狩人短編 | ナノ

フェイタンは神様だ。
これは私の中できっと一生揺るがない事実だろう。神様に誓ってもいい。この場合、誓う神様はフェイタンになるため少し可笑しな話のような気もするが、間違いではないので良しとしよう。

フェイタンは幼かった頃の私が思い描いていたような神様とは違う姿をしている。真っ白な髭はないし真っ白な髪じゃない。おじいちゃんじゃない。目つきは全然優しそうじゃない。微笑んじゃくれない。服は清潔感に溢れているような純白じゃない。何もかもが打ち砕かれるように違った。髪は真っ黒だし服装も真っ黒。目つきは恐ろしいほど鋭くて、笑うとまるで蛇に睨まれた蛙のような気持ちになる。
だけど私はフェイタンを神様だと信じて疑わない。だって彼は私が困っているとさながら漫画のように助けにきてくれる。手を差し伸べてくれる。どんなに些細なことであろうと、どんなに危険なことであろうと、絶対に。ヒーローは遅れてくるものという言葉がこれほど似合う人はいないと思う。まあ、彼はヒーローではなく神様だが。

フェイタンは人を殺すことや拷問することに愉しさを見出している。そんな奴を神様だと言うのかとフェイタンの知り合いは言っていた。神様が人を殺して何が悪い。むしろ神様だからこそ許されるんだろう。私はそう思う。現に聖書にはこう書いてあった。

『悪魔が人間を殺した数は10人、神様が人間を殺した数は2038344人』

ほらみろ、悪魔なんかよりもよっぽど神様は人を殺している。それに神様が人を殺しちゃいけないだなんてどこにも書いてない。だからフェイタンが人を殺しても何も悪くないのだ。


「イカれてる」


誰かが私にそう言った。イカれてる?勝手に言っていろ。人には人の宗教がある。私はフェイタンと出会う前から信仰心が厚かった。毎日の祈りも欠かさなかった。だからこそフェイタンと出会えた。こんなに近くに神様がいるというのに、崇めなくてどうしろというのか。もしも今の私の行いが間違いならばフェイタンが道を正してくれる。だって彼は神様なんだから。

かみさまってくろいのよ

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