クリスマスの夜は大抵の恋人が一緒に夜を過ごすんじゃないんだろうか?
「そんな遅くに?」
「なんでも23時から1時まで日付をまたぎながらしか公開しないらしい。その間どこに保管してあるかもわからなくてシャルもお手上げだそうだ」
「ふぅん」
私より盗みが大事なの?なんて、言うわけがない。重い女だなんて思われたくないし、クロロは欲しいと思ったものは必ず手に入れたがる。そんな彼の楽しみを奪うつもりは一切ない。が、さみしくないと言えば嘘になる。
「さみしいか?」
「……別に」
私が思っていたことが顔に出ていたのかクロロは私の顔を見ると、にやり、と悪い顔をした。わかっているくせに。わざとらしく聞いてくるクロロにムキになって素っ気ない返事をしてしまったが、これは逆にさみしいと言ってるようなものだ。くつくつと笑うクロロに腹が立つがその笑った顔がかっこよくて、ずるい。
ちらり、時計に目をやると短い針が5と6の丁度真ん中を指していた。
「クロロ、何時に出かけるの?」
「そうだな…21時…ナマエがもっと俺といたいんなら22時でも構わないが」
「……間に合うの?」
「間に合わないことはないな」
そう言われると無理しないでいいよ、と言いそうになってしまう。なってしまうだけで実際に言いはしないけど。これはちょっとした意地みたいなものだ。返事の代わりに少し背伸びをしながらクロロの首にするりと手を回し、前に屈んでくれたクロロの耳にキスをする。
「誘ってるのか?」
「それ以外になにかあると思う?」
今度は私がくつくつと笑い返した。ぶわり、と急に横抱きにされ体が浮遊感に襲われたが、すぐにそれはベッドへと沈んでいった。
*
3時、道歩く人は少ないというのに街はカラフルな光をところどころで放っていて楽しそうな雰囲気を醸し出していた。仕事も終わり、早々に帰ろうとしていたところでクリスマスだからと打ち上げに無理矢理付き合わされる羽目になるとは予想外だった。盗んだものを愛玩したかったが、それさえも我慢したというのに。
急いだつもりだったが数時間前にいた部屋もすでに電気は消えていて、部屋に戻ると規則正しい寝息が小さく聞こえてくる。ベッドに腰を下ろすと、ぎし、と軋む音がした。
「……ク、ロロ?」
「……起こしたか、悪いな」
「ううん、おかえり」
俺の顔に手を伸ばしながら、ふにゃりと笑うナマエに胸が暖かくなる。ただいま、そう言って頬にあるナマエの手の上に俺の手を重ねた。
「クロロつめたいねぇ」
「今日は一段と寒かったからな。……眠いだろ?俺のことは気にせず、お休み」
おやすみ、と笑いながらナマエは言うと俺の頬に添えていた手を下してまた夢の中へ戻ってしまった。布団から出たその片方の腕をそっと掴み、手首と唇にキスを落とした。
無意識