100000 | ナノ


1(10000) 2(移転) の続きです。



「うわっ」
「あ、試験前にヒソカと話してた人」


試験が始まって数分、最初に聞いた言葉がこれである。な〜んか嫌な予感するなぁと振り返れば予想通り主人公組と御対面。ほらね、そうだと思ったんだよ。スタンド同士は引かれ合うっていうからね、スタンド使いじゃないけど!それにしても「うわっ」てひどくない?聞こえてるよ?レオリオが私から距離とってるのバレてるよ?これでも私のほうが年上なんだし、もっと年上を敬おう?


「えーっと、こんにちは?」


突然自分のことを言われてどういった反応をすればいいのかと困ったのでとりあえず挨拶をした。それを聞いたゴンが人当たりのがいい顔で「こんにちは!」と返事をしてくれた。うーん、実にいい子だ。帽子を目深に被り、その上からでかめのパーカーのフードをかぶっている私は恐らく性別さえも曖昧だろう。そんな胡散臭い恰好の私によくゴンは話しかけようと思ったよね、と感心する。私がゴンだったらこんな人見なかったことにするよ。ははは、と乾いた笑いが思わず漏れた。レオリオやクラピカはそれを見て少し変なものを見るような目で見たが、ゴンは全く気にしてない様子でどこかそわそわと私を見つめていた。「……何か用かな?」。思わず声を掛けてしまった。


「ねぇ、お姉さんはヒソカと知り合いなの?」
「はぁ!?まさか!試験前にちょっとぶつかっちゃって絡まれただけで誰があんな変な人と……」


返ってきた言葉は予想だにしていなかったもので、思わず大きく非難の声を上げてしまう。そして顔を顰めて心底嫌そうに言っていうとレオリオから「あんなやつに絡まれるとかどんだけ運ないんだよ」と言われた。別に運がないわけじゃないっていうか、こっちにだって色々とめんどくさい事情があるんだよ!そう思ったがその事情がなんなのか訊かれるのも困るので声に出さずに心の中だけで叫んだ。


「あ、」
「どうかしたの?」
「ヒソカじゃないけどさ、気をつけたほうがいい人が――「おいガキ汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーか、オイ!」


トンパも警戒しといたがいいと伝えようとして、レオリオの声に邪魔された。ああ、キルアか。そういえばここらへんのタイミングで会うんだっけ。まぁトンパがどれだけ邪魔をしようが彼らはそれを突破するし別にいいんだけどね。私のことはお構い無しにどんどん話が進んでいき――といってもレオリオが一方的に怒ってるだけのようにも感じる――、キルアはゴンの年齢を聞くと少し考えてスケボーから降りた。あーまさかこの2人の出会いをこの目で拝めると思ってなかったので感慨深いな。


「オレ、キルア」
「オレはゴン!」
「オッサンの名前は?」
「オッサ……!」


その言葉を聞いた瞬間、レオリオがキレた。まぁ、レオリオの気持ちを考えたらその反応は納得がいくし、わからなくもない。私なんて彼らの10歳……いや、ゴンたちなんてもっと歳の差があるんだから。……自分で言って悲しくなってきた。言わなきゃばれないので訊かれない限り言わないようにしよう。訊かれても答える気はないけど!そんな私の心情を的確に読み取ったのか、ゴンが「お姉さんは?」と声を掛けてきた。


「へ!?」
「お姉さんはなんて名前?」
「あ、あー、名前ね!ギメイっていいます。よろしくね」


あはは、と苦笑いしながら答えれば、ゴンの元気な挨拶が返ってきた。


*


突然脱ぎ出したレオリオから離れるように走っていたら気づけばあっという間に先頭まできていた。主にヒソカの監視を任されているがここではまだ問題を起こすことはないので大丈夫だろう。原作で描かれていない問題が発生するなら話は別だけど……。そんな私の心配を知るはずのないキルアは「結構ハンター試験も楽勝かもな、つまんねーの」と興味なさげに言った。うわぁ、私もそんな台詞9年前に受けたハンター試験のときに言ってみたかった。


「キルアはなんでハンターになりたいの?」
「オレ?別にハンターになんかなりたくないよ。ものすごい難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ。でも、拍子抜けだな」


余裕綽々といった顔で語るキルアだが、ゴンたちと出会ったことできっとこの先試験を受けてよかったと感じるだろう。この先何が起こるか知っている私は彼らを見ていると、最終試験の出来事は――イルミのことは本当に許せない。私が許さなくても物語は進むし、あれも成長する上で必要な過程だ。わかってはいるがそれが歯痒く感じた。


「ゴンは?」
「オレの親父がハンターをやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが夢だよ」
「どんなハンター?親父って」
「わからない!」


元気に、勢いよくそう言ったゴンにキルアは、ぷっ、と吹き出しそれから大きな声で笑った。その顔は暗殺者というより年相応の子どもの顔に見える。


「お前それ変じゃん!」
「そお?」


首を傾げるゴンがかわいい。ていうかなんでゴンはジンさんみたいなハンターになろうとしたんだっけ?そこまで完璧に原作を覚えていたわけじゃないし、覚えてなくても大丈夫そうなものは記録していなかったから忘れてしまった。頑張って思い出そうとしてると「何年か前にカイトっていう人と出会って」と話し出す。あ、そうだカイトだ。カイトも何年か前――このとき私はすでにジンさんとの修行が終わっていた――に突然電話してきて『ジンさんの故郷に行ったら息子に出会った!』と興奮気味に言っていた気がする。

ルルカ文明遺跡の発見・二首オオカミの繁殖法の確率・コンゴ金脈の発掘・クート盗賊団の壊滅……、ゴンがカイトに聞いたことをキルアに話しているが、う、うーん、なんか胃がキリキリするようなものがいくつか聞こえたような。気のせいということにしておこう。でも、散々な目に遭わされても、カイトも私もやっぱりジンさんを尊敬してるんだよなぁ。ゴンの話を聞いていて、改めてジンさんがすごい人なんだと確認させられる。ジンさんは世界に10人といない三ツ星ハンターと比較してもなんら遜色がない。だけどハンターにまだなっていないキルアからすればそれがどれくらいすごいことなのかわからないらしく「それってすごいことなのか?」とゴンに訊いた。


「ううん、わからない。ただ、カイトは自分のことみたく自慢気に、とても嬉しそうに話してくれた。だからオレは親父みたいなハンターになりたいって思ったんだ」
「ふふ」
「?どうしたの、ギメイ」
「え、あ、いや、」


そのカイトの姿が容易に想像できたこと、ゴンの顔がジンさんと重なって親子だなぁと実感したこと、それで思わず笑ってしまい、ゴンとキルアの視線が私へと移った。前者はともかく後者はゴンには言えないので「実は私も、カイトと知り合いなんだ」と答える。私からジンさんのヒントは教えれないが、カイトと知り合いってのは教えてもいいよね。知り合いというかもうほとんど家族のようなものだけど。ていうか何年経ってもやっぱりカイトは変わらないというか、自分たちのハンター試験のときに同じように嬉しそうにジンさんのことを話すカイトを思い出した。


「カイト、私にもジンさんのこと嬉しそうに話してくれてたから、ゴンの話を聞いてるとその姿が想像できちゃって」
「え、ギメイもジンのこと知ってるの?」
「ううん、私が知ってるのはカイトから聞いたジンさんの話だけで、詳しくは知らないんだ」
「そっか。じゃあさ!試験が終わってからでいいからカイトの話聞かせてよ!」
「いいよ、話せることならなんでも」


そう言って笑えばゴンも嬉しそうに笑った。

監視しましょ、そうしましょ

リクエスト内容:Optimist.夢主がゴンやキルア達と絡む話
キルアは最初のほうではあまり楽観主に絡んでなさそうというか、様子見してそうなところありそうだなぁ…なんて。

▼お返事
応援のお言葉ありがとうございます!ゴンはともかく、キルアと絡んでいると果たして言えるのか!?という文になってしまいました、申し訳ないです……。また時間ができたときにでもわちゃわちゃ3人が絡む話を書けたらな、と思います。

momo様、リクエストありがとうございました!

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