「……相変わらず準備がいいな」
オメガは例年通りハロウィン限定発売のかぼちゃプリンをオレに渡してきた。しかも今年はジャポンでおいしいと評判になっている洋菓子店――普通に買いに行っても買うことが出来ないと聞いた――のかぼちゃプリンである。なるほど、通りで三日も姿を見なかったわけだ。
「お前が毎年プリンを強請ってくるからな」
そのオメガの言い方についムッとしてしまった。オメガは勘違いしているようだがオレはハロウィンというイベントに便乗しているだけであって駄々をこねるガキと一緒にされてほしくはない。
「……別に強請ってない」
「そうなのか」
否定したオレに返事をするオメガだが本当にわかっているのか。いや、興味がないだろうからきっと何も考えていないに違いない。……それはそれで腹立たしいな。オレがそんなことを考えている間にオメガも何か考えていたのか、突然オメガはオレに手を差し出した。いや、オレというより先程渡されたかぼちゃプリンへ、か。オメガからトリックオアトリートなんて台詞が出てくるとは考えにくいため、オレはどうかしたのかとオメガに声を掛けようとすると、先にオメガの口が開いた。
「じゃあさ、いらないなら別の奴にやるから返せよ」
別の奴とは一体誰のことを指しているんだ。そう言おうとしてぽわんと頭に浮かんだのは唯一オメガの態度を気にしていない――というよりオメガをただの人見知りだと勘違いしてる――ウボォーの姿だった。他の団員ならオメガがやるといっても受け取らないだろうがウボォーなら受け取る。絶対受け取る。その光景が容易に想像できたオレは「トリックオアトリートだと言っただろ?」と暗に“このかぼちゃプリンは返さないぞ”と余裕めいた返事をしたがかぼちゃプリンを持っていた手に思わず力を入れたため余裕のよの字も見えない。
「……駄々をこねる子どもだな」
オメガが小さくそう呟いたがオレは聞こえないふりをしてかぼちゃプリンを食べることにした。
Happy Helloween!