その瞬間、カイトは目にも留まらぬ速さで反応し、脱兎の如く逃げ出した。
「あっ!待てカイト!」
逃がすものか!と、明らかに“お菓子を持っていません”と行動で示しているカイトを私は急いで追いかける。ジンさんに鍛え抜かれた脚力はこういうとこで役に立った。しかしそれはカイトも同じで、お互いの距離が縮まることはない。離れていないだけマシだとは思うが、いつまでこれが続くのだろうか。と、そんなことを考えていると巨大なイノシシを軽々と抱えたジンさんがひょっこりと顔を出した。
「お?なんだお前ら、鬼ごっこか?」
自主トレーニングでもしてると勘違いしてるんだろうか。やる気があって大変よろしいと頷きながら笑っているジンさんにそういうわけじゃないと私とカイトどちらかが口を挟もうとした。が、
「よし、じゃあカイトはナマエに捕まったら腕立て千回でナマエはカイト捕まえられなかったら腕立て千回な」
「「なんでそうなるんですか!?」」
突然意味のわからないペナルティを課されてしまった。有無を言わさぬジンさんの笑顔という威圧に何も言えなかった私達はハロウィンというイベントを忘れて必死に鬼ごっこをすることになってしまったわけである。
「ハッ ねえこれおかしいよね!?カイトにイタズラするつもりだったのに私が腕立てしてるなんて!」
私がハロウィンというイベントを思い出したのは腕立てが残り五十回をきった頃だった。
Happy Helloween!