一周年 | ナノ


04

「制約も誓約もないのに高度な能力が使えるから悪魔の実って便利だよね」
「念じゃできないこともできるしな」
「私達の世界だったら陸が主だからカナヅチになるってのをデメリットに感じることもないしねぇ」


そう、この世界では念ではできないような能力――頑張れば念でもできるかも知れないが――で自身の姿を砂や、炎、氷などに変えることができるのだ。しかしその能力の見返りとしてカナヅチになるようだが鳥の姿に変えられる能力は少し反則のような気がした。まぁ、そんな私達もカナヅチである悪魔の実の能力者からすれば十分反則なんだろうけど。

私達はこの世界で悪魔の実の能力のように念能力を使うことができるようになった。もしかして郷に入っては郷に従えということわざがあるように、私達もカナヅチになっているのではないかと思ったが海水に触っても少し怠いかもしれないといった程度でこれといって支障はない。気にしなければ普通に泳げるしね!それよりジンさんとの修行のが比べものにならないくらいしんどかったしね!!そう考えるとすごく悲しい気持ちになるので極力思い出さないでいいように海水に触ろうとはしないのだが泳げる事実があるため私達が悪魔の実の能力者と思われることはなかった。たぶん唯一のトリップ特典に違いない。


「能力者といえばさぁ、Mr.5だよ!」
「あいつがどうかしたか?」


私が唐突にMr.5の名前を出し、尚且つ嫌そうに話す姿にカイトは不思議そうに聞き返してきた。ちなみにMr.5は私達より上の立場あるため悪口のようなことは避けるべきかもしれないが今私が言わんとしていることは純粋な感想なので大丈夫だろう。それにMr.0であるボスの悪口でなければ基本的に許される気がする。気がするだけなので誰であろうとエージェント達本人の目の前では絶対に言わないが。

他のエージェントとやり合ったことがないため実力がどうなのかはわからないがややこしさを避けるため私達はMr.10とミス・テューズデーの位置をキープしている。それ以上でもそれ以下でもないように加減を見極めるのはすごく面倒臭い。そのため鍛錬という名目でストレスを発散するかのように私達は毎日組手に励んでいた。カイトには相変わらず負けるほうが多いがそれもでも5回に2回は勝っているので満足――カイトにこれをいうとこれくらいで満足するなと注意される――である。


「俺の身体は爆弾になるとかなんとか言ってるけど鼻くそ飛ばすのはやめろって思わない?汚いっての!」
「別にお前に攻撃してくるわけじゃないからいいだろ…」
「それでもいや!だってもし近くで誰かに攻撃したら爆風が飛んでくるでしょ?つまりその爆風も鼻くその一部!無理だわー…」
「………そこまで考えてるのはナマエだけだと思うけどな」


呆れたように話すカイトは事の重大さがわかっていないらしい。他人の鼻くそ、塵となって風に飛ばされたそれが自身の顔に当たると思うとすごく嫌だ。そもそも鼻くそを人に飛ばす行為自体受け付けないし、いくら敵だとしても礼儀も清潔さも恥じらいもないじゃないか!いや、あの男に恥じらいがあるとそれはそれで気持ち悪いんだけど。


「Mr.10、ミス・テューズデー」


噂をすればなんとやら、Mr.5がタイミング悪くやってきた。こんなところに一体何の用があるというのか。こんなところ、そう、カジノだ。ここは以前私達が問題を起こした、というべきなのか、トリップ初日にやってきた“夢の町”と称されるギャンブルの街、レインベースにある“レインディナーズ”というレインベース最大のカジノだ。支配人はミス・オールサンデーだが、基本的に管理・監視は私達が任されている。


「あら、あなたがこんなところに来るなんて珍しい。どうかしましたか?」


先程までの話し方や内容が嘘かのように態度が180度コロッと変わった私にカイトから微妙な視線を送られている感じがするものの私はMr.5に笑いかけたままで反応しなかった。嫌いな人にもあえて愛想よくするのが私である。Mr.5はそんな私達に気付いていないはずなのになぜか片眉を上げた。


「指令状はまだ読んでないのか?」


その言葉に思わずカイトと二人で「あ」とハモってしまった。Mr.5はそんな私達を見て馬鹿にするような溜息を吐き出したが今朝私達はカジノのほうで問題が発生したためそれどころではなかったのだ。指令状の存在は気付いていたが別に見忘れていたわけではない。時間がなかっただけだ。……まぁ、今の今まで忘れていたのだから結果的にはそういうことになるが。
そんな私達にMr.5は大まかなことだけを教えてくれた。指令状がどちらにも出ているからといって内容まで全て同じというわけではない。だから私達には私達のやることがあるだろうからとMr.5はしっかりと目を通しておけと念を押してきた。


「でも私達がここを空けるなら誰がカジノを……」
「それは俺とミス・バレンタインが代わりにやる」
「……じゃあ、よろしくお願いしますね」


にっこりと笑顔を作ったつもりなのだが隣にいるカイトは付き合いが長いせいか本当はよろしくしたくないと思っている私の気持ちが読み取れたらしい。鼻くそまみれにすんなよとか思ってるのもきっとバレバレだ。そういえばペアであるはずなのにミス・バレンタインの姿が最初からないため彼女はどこにいるのかと訊けばカジノで遊んでいると。頼むのが余計に心配になったのは言うまでもない。ミス・バレンタインの能力はキロキロの実…だったか?どことなく私と能力が被ってるから好きじゃないと以前カイトに言ったら「ガキか」と言われたことを思い出した。

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