50000 | ナノ


早朝に起床し走り込みをして朝食、筋トレを重点的にやってから昼食、念関係を主軸にメニューをこなして夕食、瞑想をして就寝。修行内容を変えること以外はなんの代わり映えもしない俺達の一日だ。だからといってナマエ達がこれに対してつまらないと言うことはない。その言葉が一度でも俺の耳に入れば今以上にきつい課題を出すつもりだが、つまらないという暇がないくらいすでにきついというのが現状だろう。しかし俺は非常に!そう、すこぶる!苛々していた。その原因は俺の弟子である二人の内のどちらか片方ではなく、ナマエとカイト、二人共だ。


<ナマエの場合>

「お前カイトに好きだって言わねぇの?」
「ジジジジジンさん!?ちょっと黙ってください!」
「ナマエの声のがでかいからお前が黙るべきだろ」
「内容が内容だからジンさんが黙るべきでしょ!!」
「カイトは風呂だから問題ねぇよ」


そういう問題じゃない!!と抗議するナマエはポポポとまずは頬を赤く染めてそれから侵食するように顔全体が赤くなっていった。こんなにも簡単に頬を染めるくせにカイトの前で俺がこの手の話題を出してもこいつはおくびにも出さない。どうやって我慢してるのかはわからないが思わず感心するほどには平然を装っている。まあ、よく見ればそわそわしているからカイトは気付いていないが俺は目敏く気付くわけだが。


「今更隠す必要ないだろ。お前ら食事のときなんか夫婦同然だしな」
「そ、れは、なんか今まで気にせずそうやってきたから急に態度を変えたら変ですし……というか夫婦同然って別にそんなことないです!」
「ぜってーある」
「ない!ジンさんにも同じようにやってるじゃないですか!」


どーだか。たしかに俺とカイトに対する態度は同じように見えなくもないがナマエは無意識でカイトを優先してるというか、贔屓してる。いや、俺は別に嫉妬してるとかそんなわけねぇけどな?年下のガキ相手にするより年上がいいから俺。


「……大体、カイトのことを今まで家族同然に見てたっていうか、ほぼ兄弟みたいな感覚だし、カイトも私のことそういう風にしか見てないから今更私が気持ち伝えたところでぎこちなくなるの目に見えてます」


すっかり顔の熱は下がり、しゅん、と落ち込んだナマエ。なんだよ、傍から見たらこれ絶対俺が悪いみたいじゃねぇか。俺は悪くないが、まあ、そんなに気を落とすなよとナマエの背中をポンポンと叩いて慰めてやりながら、もう俺がどうにか根回ししてやろうか、と考えているとナマエが急に視線を上げて俺を見つめた……というより睨んだという表現のほうがしっくりくる。


「カイトには何も言わないでくださいよ」


まるで俺が何かするつもりだったと言うような台詞である。いや、まさにそんなこと考えてたけど。そしてその後に「何かやったらジンさんでも許さない」と言われた。正直ナマエに何かされようとも実力は断然俺のが上だから負けるはずがないのだが、そのときのナマエの目が『何かやったら呪い殺すぞ』みたいな感じで本当に呪われそうだったので俺は何もしないことを心に誓った。


<カイトの場合>

「お前ナマエに好きって伝えねぇの?」
「バッ、バカ言わないでくださいよ!ていうか黙れアンタ!!」
「ナマエは飯作り始めたばっかだからこっちにゃこねぇよ」


そういう問題じゃない!!と思いきり口を押さえられた。あれ、なんかこの会話デジャブ。んーんー!と押さえられた口で文句を言えば、一度睨まれて解放された。顔自体には出ていないがチラチラと見える耳が赤い。こいつもナマエと同じで顔に出ないようにしているのかはわからないが平然を装いつつもいつも耳だけは赤くなる。髪に隠れているからバレてないだけだ。あといつもよりギクシャクする。本当に少しの違いだからナマエ同様、注意深く見なきゃわかんねぇけど。


「このまま言わずにナマエが修行終わってここ出て行ったらどうすんの?他の男に取られちゃうかもしれないぜぇ?」


にやにや、にまにま、つい楽しそうな顔をしてしまう。カイトは再び俺の口を塞ごうとしたが俺はあっさりとその手を避けた。そんな生温い攻撃じゃあ俺は掴まんねぇぞ。踏ん反り返って鼻で笑えば返事に舌打ちが返ってきた。


「……前も言ったかもしれませんけど、ナマエのことは家族とか兄弟みたいにしか見てなかったし、実際本人にもずっと前に似たようなこと言っちゃったんですよ」
「昔は昔、今は今、だろ」
「いや、ナマエだって絶対俺のこと兄弟としか見てないですよ」
「わかんねぇじゃん」
「普段の態度から見てればわかりますって」


だから好きだって言ったらきっと今の仲が拗れるに決まってる、とカイトは言ったが、やはりどこかで聞いたことのある会話だ。実に面倒臭い。今こそ肉食系男子(見た目)の意地を見せてやれよ!!と言いたいところだが中身は草食なので無理だろう。仕方ない、ナマエに呪い殺されるのは嫌だからカイトのほうを根回ししてやるか……と頷きながら考えたところでガシリと肩を掴まれた。


「……いくらジンさんでも余計なことしたら、許しませんから」


ギリギリと強まる力がまるで有無を言わせない。こんなの簡単に振りほどけるはずなのにまるで呪い殺さんとする目がそうはさせなかった。長髪でさらにホラーだ。俺が「お、おう」とだけ返事をして何度も上下に頷けばその手はパッと離されて、まるで図ったかのようにナマエが食事の準備を手伝ってくれと部屋へやってきた。カイトは一瞬焦ってたようだがナマエは全く聞いていなかったようで俺達の様子に首を傾げた。

俺の身にもなれ
お前ら考えもやることも同じことしかしねぇのになんでそんなにもだもだやってんだよ!!あーくそ!!!

リクエスト内容:カイトと楽観主のもどかしい両片思いにジンさんがもやもやを通り越して苛々する話
お前ら見れば明らかに両想いなのになんで気付かないわけ!?とはっきりしない二人に苛々していたので自分が仲介役を務めてやろうとするけど結局できないお話でした。呪いダメ、絶対。

星霜様、お祝いの言葉とリクエストありがとうございました!

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