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「ギメイってなんだか頼りないよね」


俺がそう言うとギメイは「えっ」と声を上げて両手を胸の前でクロスした。……このポーズされんのなんかイラッとくるな。


「ひどいなーこれでもシャルナークくんよりお兄さんだし身長も俺のほうが高くない?」
「そんな身長すぐに追い越すよ」
「シャルナークくんその顔で身長も大きくなったらお兄さんまじでいいとこねぇじゃん」


ギメイはケラケラ笑ったかと思えばわざと落ち込むふりをする。さっきから雰囲気がころころ変わって、顔が見えないというのに百面相みたいだなと思った。というか、ギメイは自身のいいとこがなくなるなんて言ってるわりにはギメイの身長はそこまで高いとは言い難い。170…くらいか?長髪のあの相棒と並ぶと結構な差があるので見ていて可哀想だなと同情してしまいそうだ。夢を見るのは勝手なのでこのことはギメイには言わないけど。
話を戻すがギメイはどこか頼りない。念という特別な能力を抜きにしても俺より弱いからかもしれないが、俺より三つ年上なのに頼りないと思われるのはどうなんだろうか。


「あ、そう、顔だよ」
「ん?」
「ギメイは顔が見えないから不安定で頼りなく見えるんだよ」
「……ま、そういう意見もあるかも知れないけど、だからって俺はシャルナークくんに顔見せたりなんかしねぇぜ」
「チッ」
「舌打ち聞こえてるっての」


ちぇっ、そういうとこはしっかりしてる。間抜けな人物のように見せといて細かいところはしっかりしてたり、都合の悪いところはどこ吹く風と誤魔化して俺との距離をとるような言動だったり、おそらく俺が思ってるよりもギメイは賢い。ギメイはどこからどこまでが嘘で本当なんだろう。


「舌打ちしたくなるほど気になるってこと!」
「俺のこと気にしてどうすんのさ」
「別にぃ…だってギメイの素性よくわかんないからさぁ」
「会って数日の人の素性なんてそんなもんだろ」
「そう?俺会って数日もあれば大体調べがつくんだけど」


お気に入りの猫の携帯を振りながら笑って見せれば「おー怖い怖い」なんて言いながらギメイは帽子のツバを掴んでさらに深く被る動作を見せた。どうやら怖いのは本当らしい。何がそんなにバレたくないのか、そんなことをされたら気になってしまうこれはもう職業病だと思う。そして今はそんな職業病を発揮してギメイを探ろうとしていた。有名人だから隠しているというのも可能性のうちの一つとして考えることができるがまず俺が知っている有名人にこんな声や見た目、髪色は知らない。まぁ、テレビに映るような有名人とか興味ないから詳しくはないんだけど。


「有名人じゃあるまいし、そんな隠さなくったっていいじゃん」
「それはどうかな?素性がよくわかんないなら本当のこともわかんないだろ?俺は本当に有名人なのかもしれない」


ギメイは口角をニッと上げてわざとらしく一瞬肩を竦めた。


「もしギメイが有名人になれるなら俺もなれる自信あるよ」
「さっすがシャルナークくん、モテる男は強気だなー」
「ふふん、まぁね」
「いや、そこは一応謙遜しとこうぜ」


紛うことなき言葉に堂々と肯定すればギメイは口元に苦笑いを浮かべた。謙遜?わかりきってるんだから謙遜する意味がないだろ。そこら辺にいる可愛いあの子も綺麗なあの人も、この顔でにこりと笑って言葉を掛ければちょちょいのちょいで簡単に釣られてくれる。作った性格に気付きもしない顔さえ良ければそれでいい軽い女はごまんといて、今までそれでやってこれたのだから。そんなことを考えていれば、まるで考えを読んだかのようにギメイは言った。


「でもま、有名人ってなると雲の上の存在だし本性も何もわかんねぇからシャルナークくんみたいに顔が可愛いかったら簡単に騙されちゃいそうだわ」
「何、もしかして俺の性格が悪いって喧嘩売ってるの?買おうか」
「あっ、売ってない!買わなくていいから!……いや、つまりさ、あれだよ、シャルナークくんが芸能人だったら俺ファンになってるなって話!」
「……ハァ?」


冷や汗垂らして誤魔化し気味のギメイは殴られるとでも思ったのかすでに防御体勢に入っていた。何言ってんだ、こいつ。「意味わかんない」と呆れ混じりで淡々と言えば殴られないと判断したのか、ギメイは防御を解いて「うん、俺もそう思う」と口元を手のひらで覆いながら笑った。………なんでこんな話になったんだっけ。


「……ほらギメイ、飛行船まであと少しだからさっさと行こ」


ペースを上げて歩けば「待てよ!」と後ろからギメイが声を掛ける。ふん、待ってなんかやるもんか。返事も振り向きもせずに後ろから聞こえる足音に耳を傾けて俺はただ飛行船に向かって歩いていた。そんなに距離が空いてなかったからすぐにギメイは俺に追いついたが、なんだか恥ずかしくて話を続ける気にはなれなかった。

話しかけるなら事務所を通してよ!
ちょっと今ギメイと話したくないんだってば俺!

リクエスト内容:楽観主がもしも男性だったら(シャルが男性版主人公にキュンとしたところ)
キュンとしてるのか微妙なところですが無意識に照れてるシャルナークのお話でした。楽観主が男だったらシャルナークの呼び方は『シャルナークくん』で固定のままですが敬語は取っ払います。あと三次試験(無線機探し)のときにさすがに年下にあそこで頼るのも男としてアレだな…ってなるので頑張って自分で壁壊しますよ!

▼お返事
はじめまして、お祝いの言葉ありがとうございます!私の中でシャルは若干(?)腹黒なイメージがあるんですが、たまに抜けてるとこもあるといいなぁ、なんて考えながら書いてます。かわいく見えてるならよかったですヤッター!

K様、リクエストありがとうございました!

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