嚥下狼 | ナノ


君の熱に僕は救出される

「お前また一目惚れしたらしいな」


同僚はどこからその情報を仕入れたのか、スコルにそう言うと小馬鹿にしたように笑った。ここで仕事をしている限り仕様も無い情報はほぼ筒抜けだとわかっているため諦めているスコルだが小馬鹿にされるのはやはり少し気分が悪くなる。


「それがどうかしたか?」
「飽きないな、今までのやつら同様飽きれば捨てるだろ」
「言っとくけど今までだって飽きたことないし捨てたことねぇよ」


そういう言い方はやめろ胸糞悪い。
スコルのオーラがゆらりと揺れたことに同僚は鼻を鳴らして再び笑った。実際、スコルが一目惚れしやすいというのは間違っていない。しかし自分がその人物に飽きたから離れていっているわけではないし、まだ好きかと問われればスコルは素直に好きだと答えるだろう。ただそれが恋愛から友情への好きへと変わってしまっただけの話である。


「しかし今回は面倒臭そうな奴を好きになったみたいだな」
「……暗殺者だなんてそのときは知らなかったんだよ」
「ハッ、お前なら知ってても知らなくても好きになってたくせに」


そう、その通りだ。スコルはイルミが善人であろうと悪人であろうと、出会ったときすでに一目惚れしてしまったのだから関係がない話だった。さらに今まで好きになってきた連中に比べてイルミに抱いた気持ちは全く違う。好きだという気持ちは変わらないが、イルミを想うと暖かい気持ちになるのだ。スコルがイルミを太陽と呼び追いかける理由はそこにあった。


「俺には理解できん」
「してほしいとも思ってねぇよ」


まず恋愛に対して根本的に違うのだからできるわけもない。そのことはスコルが声に出して言わずとも同僚もよくわかっている。


「お前には一生わかんねぇだろうけど、俺がずっと恋焦がれて止まなかった太陽はきっとイルミなんだよ」


今まで一目惚れしてきた相手に足りなかった、ポッカリと空いた穴を埋める相手が暗殺者で、その彼を太陽だと比喩するのはおかしなことかと思うスコルに同僚はまた鼻を鳴らした。


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