わるいゆめをみた | ナノ


17 いえるはずないや


幻影旅団の頭脳とも呼べるシャルナークはかれこれ五年以上十年未満の付き合いであるオメガのことが苦手だった。オメガは口数が極端に少ないわけでもなく、話し掛ければちゃんと返事を返してくれる。時にはシャルナークの情報処理を手伝ってくれることもある。オメガはクロロと同様に博識で、クロロが知らないことも知っているなど多々あった。それでも苦手に感じるのは、かなしいかな、彼の表情のせいだ。仲間としての意識はあるが、とっつきにくい。シャルナークはクロロほどオメガという人間を知らないのだから仕方のないことと言えば仕方のないことだ。

今回オメガと共に行動することになってしまったのはシャルナークが撒いた種である。シャルナークは溜まっていた仕事を全てやり終えたおかげで暫くの間仕事に参加しなくていいことになっていた。じゃあそれなら、と前々から必要だと思っていたハンターライセンスを手に入れるためにハンター試験を受けようと思った。事前に調べていたからシャルナークはハンター試験がどれだけ時間が掛かる試験なのか理解していた。だからこそ、もしかしたら長くてこれくらいは開けるかもと計画の話をクロロに持ち出した。当然ながら許可は簡単に下りた。


「ハンター試験、か」
「うん。情報扱ってるとライセンスとかあったほうが便利だしね」
「……わかった。オメガも連れて行って受けさせてこい」
「うん、…………はァアア!?」


………と、いうことで珍しくオメガはクロロの傍から離れシャルナークと共にハンター試験を受けることとなった。勿論素っ頓狂な声を上げたのはオメガでもクロロでもなくシャルナークである。「なんで俺?」「暇だろどうせ。オレの代わりにとってこい」「はいはい」とまぁいつも通りオメガはそれを受け入れるんだからシャルナークも嫌ならやめたほうがいいなんて言えるわけがない。だから泣く泣く苦手なオメガとハンター試験を受けるはめになったのだ。

話を振ればたしかにオメガは返してくれる。だけど、なんの話を振ればいいんだ!?シャルナークの頭の中はそれに悩まされていた。クロロもだが、シャルナークも女性にモテる。街を歩けば好青年に見えるその姿に女性は目を止めるし、頭の回転が早いシャルは話題に困らず見た目だけでなく関わっても好印象。まあそれは蜘蛛の本性を知らないからだが。世の中知らないほうが幸せなこともあるとはまさにこれである。と話は逸れたが、そんなシャルナークでさえどう関わりを持てばいいのかわからない相手がオメガという男だった。


「俺ハンター試験ってのがよくわかんないからシャルを頼るかも」
「あ、ああ!全然大丈夫!任せてよ!」


胸を貸すような仕草でシャルナークは自身の胸の前に拳を作った。その笑顔はまさに好青年。人良さそうな性格なんだろうなと誰もが思うほどだ。が、内心ではあのオメガが俺に“頼る”ことなんて絶対ないだろと考えていた。人の手を借りずになんでもそつなくこなすオメガをシャルナークはよく知っている。たまにクロロに手伝えと言っているのを見るが断られたら諦めて結局一人で何かをやっている。しかもオメガが手伝えと声を掛けるのは必ずクロロだけで、周りに他の団員がいようが声を掛けることはなかった。ウボォーギン曰く、『オメガはすげえ人見知りなんだな!』。シャルナークは思う。ありえない。


「……こんなに簡単なもんなのか」


試験中、ぼそりと隣で呟いたオメガにシャルナークは声に出さず頷くだけの同意をした。そしてシャルナークの予想通り、オメガは一度としてシャルナークを頼ることなくハンターライセンスを手に入れたのだった。

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