わるいゆめをみた | ナノ


06 どろだらけでもいきているから


辺りを見渡した男、見た目はまだ六歳の少年は、年齢にそぐわない落ち着いた雰囲気を纏っていた。

今までで一番環境が悪いようだが、ここは一体どこなんだろうか。気づけば両親はいなくなり自身をここに置き去りにしていったことから捨てられたということは明白だったが、さして悲しむことではなかった。 十九回死んで、二十回産まれたうち、捨てられたのはこの二十回目が初めての出来事だった。そんなに簡単に子どもを捨ててもいい場所なんだろうか?男は疑問に思ったが、今はもう赤の他人、別に彼らが周囲から今後どういう扱いを受けようがどうでもよかったため、考えるのを放棄した。それこそ其処ら中にあるゴミのように。
周りはすべてゴミで囲われ悪臭が漂っており、空気も目に見えてきたない。環境汚染でいつもより早く死ぬんじゃないだろうかと思わずにはいられないほど。

とりあえず歩いてみなければ進めるものも進まない。男は未来の、いつ、何時、何分に、自分が死ぬとわかっているものの、それ以外で死ぬことは絶対に嫌だった。何度も繰り返された生死で、感情のほとんどを落としてきてしまった男だが、それだけは唯一何度死んでも変わらない。

男は歩いていた。このゴミだらけの場所から景色が変わることはあるのだろうかと考えるくらいには、ただ歩くだけ。建物は相変わらず顔を出すことはないが、そろそろ歩くだけの現状に飽きてきた男にとっては嬉しいともいえる変化が起こる。少年に、出会った。男と変わらぬ年齢に見える少年もまた幼い容姿に似合わない雰囲気を醸し出していたが、まだその顔には幼さが残っている。


「ここがどこか知ってるか?」


少年は男の気配に気付いていなかったのか、少し驚いたように大きな瞳をさらに大きくする。男は少年の行動や反応には興味がないため、何も思うことなく静かに返事を待った。


「流星街、というらしい」
「なんだ、お前も詳しく知らないのか」
「お前も知らないなら文句を言うなよ」


男は「別に文句は言ってない」そう言おうとして、いちいち突っ掛かるのは面倒臭いと判断しやめた。少年はその反応が気に入らなかったのか、眉間に少しだけ皺が寄る。しかしそんなことを気にしない男は、この年齢でハッキリと感情を表に出さないのは珍しいなと考えていた。だが感心するという感情は湧かない。至極どうでもいいことだからだ。


「流星街というのはなんでも捨てていいところなんだな」
「……どうしてそう思うんだ」
「ずっと歩いてここまできたが分別なしに色んなモノが捨ててあった」
「処分場かもしれない」
「へぇ、ここの処分場はえらく緩いみたいだな」
「……オレが知るわけないだろ」


男はこの流星街という場所がどういうところなのかわかっていた。この少年に出会うまで様々なゴミを見て、そしてこの少年を見て、確信した。そういう場所なんだと。そして気付いた。


「お前も、棄てられたんだろう?」


棄てられたモノ同士、仲良くしよう。

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