わるいゆめをみた | ナノ


00 うまれたうまれた


男は今まで二十一歳の誕生日を迎えたことがなかった。

何度も、何度も、違う世界に産まれては、何度も、何度も、二十一歳になる直前に死んでいた。それを体験している男にもその理由は一切わからず、さらには、なぜ前世の記憶を持って再び産まれるのかが理解できなかった。西暦も、世界も、未来で産まれたかと思えば次は過去へ、まるで映画のような世界に産まれたかと思えば漫画のような世界へ。何もかもが違うというのに、物心がついた頃には必要のないはずの前世の記憶が必ず蘇り、死ねば死ぬほど記憶は増えていくばかりだった。

最初は、もう一度人生をやり直せる、ラッキーくらいのお気楽な考えだった。しかしそのときも二十一歳を前にして死んだ。
再び生を授かったとき、不安があった。少し、おかしくもなっていた。それでも前世と前々世のお気楽だった性格のおかげか、あの二回はただの偶然だったのかもしれないと思うのに数年かかったが、なんとなく、落ち着けた。その期待も裏切られて結局男はまた二十一歳を前に死んでしまったが。

それなのに男はまた産まれた。
頭がおかしくなったかのように発狂した。実際に頭がおかしくなった。精神病院に通ったのは数えきれないほど、精神病棟に隔離されたのはそれより少ないものの、そのまま精神病棟の一室で何年も、違う世界での年数も入れれば何十年も過ごし、やはり二十一歳を前に死んでいった。

男の死は様々で、車に轢かれたり、階段から落ちたり、海で溺れたり、腹を刺されたり、病気だったり、それはもう、死んだ数だけバリエーションがあった。男は何度も発狂して、精神がイカれてしまったが、それでも自殺したのは一度だけだった。二十一歳を前に死ぬことはわかりきっているというのに、自ら死に急ぐことだけは怖くてできなかったのだ。

そして男は二十回目の誕生を迎えた。

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