Optimist | ナノ

ハーフパンツにパーカ、しかも中は半袖シャツ。靴を履いてなければ靴下さえもない。そんな最悪な状態で、私は冷たいコンクリートの上にただ一人、ぽつんと立っていた。

これがほんとに夢ならいいんだが。



02



結局、誰に電話を掛けても電話に出る以前に発信音さえ鳴ることはなかった。それなのに電波はある。最初は話し中なのかもしれないと思ったが、掛ける相手全てが同じ状態なのでさすがに偶然とも言い難い。
となると、今の状況を受け入れるわけではないが、どうしようもないものはどうしようもない。もう少し明るくなったらこの廃墟から出ようと思った。


*


1時間ほど経った頃、携帯に表示された時間はまだ深夜2時前だというのに外は薄明るくなってきた。どうやらこの携帯の時間は合っていないらしい。この寒さからすると日付も合ってないのかもしれない。
裸足で外に出るのは気が引けるが履くものがないので仕方ない。危ないものを踏まないように気を付けよう、と私は廃墟から出た。

あとから気づいたことだが、私は幼くなっていた。元々、中学のときが成長期だったので身長に変化は差ほどないわけだが、16くらいだろうか、高校生くらいの顔になっていた。ついでに胸もC手前くらいだろう。つけてたブラが多少大きく感じたときのこのなんとも言えない悲しみ。まぁ、そんなことはどうでもいいんだが。
一番驚いたのは目と髪がブラウン…というよりアッシュ系の色に変わっていたこと。日本人でもアッシュ系に染める人はよく見掛けていたので違和感がないといえばないが、どこか不思議な感じがした。色素が薄くなったのか?まぁ、その理由はわからないけど。


「意外と街が近かったなぁ」


歩いて30分くらい経ったか、街にはすぐ辿り着くことができた。この状況に陥ってる時点で運がいいとは言えないが、廃墟のようなとこから街が見えていたので迷うこともなかった。

街に近づくにつれて看板などがあちらこちらに見えていたわけだが、その文字を普通に読める自分に、なぜ読めるのかとただただ違和感が生まれた。
学生の頃は英語の成績がこれでもかというほど悪いわけでもなかったし、かといってこれでもかというほどいいものでもなかった。可もなく不可もなくといった感じだったのを覚えている。

だからといって、看板に書いてある文字を読めるかと言われると話は別。この文字は“ファンなら”読める人もいるだろうが“普通の人なら”読めないはずなのだ。だから所々にある看板のように、それを日常的に使うのはおかしい。そして私はその文字が、まるで平仮名を読むよう容易に読めてしまった。
まるで、今の私がこの世界の住民でもあるかのように。


「…ハンター文字だよ、ね」


一人ごちる。それと同時にぶわっと冷や汗のようなものが全身から出るのがわかった。もしかしたらあれは違う国の文字かもしれないと自分に言い聞かせながら再び看板を見るが明らかに私が知っている文字だ。いちファンとして、ハンター文字を覚えたかった私は何度も見たあの文字を忘れるわけがない。たどたどしくではあったが雰囲気だけでもつかんだのを覚えている。あくまでも、たどたどしくではあったが、だ。容易に読めるようになんかなった覚えは一切無い。


「…は、ははーん?」


笑えない。とりあえず落ち着こう私。


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