Optimist | ナノ

「ようこそ、流星街へ」


目の前の男はゴミが積まれた場所を指し、そう言った。



01



最近夜はハーフパンツに半袖シャツでは少し肌寒いくらいで、夏が終わりかけてるんだろうなと思いながら体を冷やさないように近くにあったパーカを着た。
今日は久しぶりの休日で、秋物の服でも見に行こうと出かけたわけだが、少し彷徨き過ぎたようで足が悲鳴を上げている。


「さすがに疲れた…」


ボスンッと布団へ倒れ込みながら呟くと、私以外は誰もいない静かな部屋に私の声と溜息だけが響いた。
充電器のプラグをコンセントに差し込み、携帯を充電する。そのまま少し触っていると、充電しているせいか携帯が熱を持ち始めた。私は気にせず同僚から送られてきたメールを確認して、返信した。
携帯の画面をずっと見ていると段々を目が疲れてきて、睡魔が私を襲う。この返事をしたら寝ようかと思いつつ、さっさと文字を押そうとするがやはり眠い。今にも瞼が結婚しそうだ。


「いっ…!」


夢の世界に片足を突っ込み始めてた私の額に、ゴツンッと持っていた携帯が落ちた。痛い。寝かけてたはずが痛みで目が覚める、どころの話ではなかった。


「おい、どこだ、ここ」


もちろん、返事なんてものは誰からも返ってくるはずがない。むしろ返ってくるほうが怖い。私の目がぱっちりと見開かれる。いや、まじでここどこ。
先程まで横になってた布団の代わりに、冷たいコンクリートの上に私は寝ていた。廃墟といってもいいようなその場所には私と額に落ちた携帯、そしてプラグに刺さっていた充電器しかない。あまりにも急すぎて変な夢のようにも感じた。
…夢か、これ。むしろそうじゃないとおかしい。今の今まで布団に寝て携帯を触っていたわけだし、私が高速移動とかテレポートとか使える実は能力者でしたってことで無意識に能力を使っているなら話は別だが、

―――この状況でそれはありえない。

そんなことは私が一番わかってることだった。この場合自分の頬を抓ったりするんだろうが、夢を夢だと気づくことは中々に難しいことだ。たしか明晰夢、だったか。生憎そんなことができるように特訓したこともなければ、そういう体質なわけでもない。むしろ変な夢を見てもそれは当然のように感じて、起きたときになんだあの夢!ってなるのが毎回だ。

ヒュウ、と外から風が入る。今に始まったことではないが、ここがどこかわからず考えている間は風が入ってきていることなんて微塵も気づいていなかった。おもっくそ寒い。


「あ、メール」


ふと、携帯に目を向ける。そういえば夢の扉を開き掛けて返事するのを忘れてたな、なんて状況を把握できない今、別のことに頭をもっていこうと思った。電波は3本しっかり立っていたのでどうやらここは電波が悪い場所ではないらしい。
文字は打ち終わっていたので送信ボタンを押すだけだった。が、送信できない。そう、“押すだけ”のはずなのに。何度送信ボタンを押しても“送信できません”の一点張りである。アドレスが間違っているのかと思い同僚のアドレスを確認するが、間違いなんてどこにも見当たらない。


「…受信拒否された?」


なんて、そんなこと、ありえない。さっきまでメールしていた相手を拒否するなんてそんな薄情な同僚なんかじゃない。どうせだし電話でもしてみようか。そう思い同僚の番号を押して携帯を耳に当てる。出ない。電話にでんわ、なんて馬鹿なことを言いたいとこだが発信音さえもしない。発信ボタンを押した途端、プツンと切れてしまうのだ。
ひくり、と無意識に顔が引き攣る。


…さすがにこれはおかしい。


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