Optimist | ナノ

実に在り来たりのようで、実に嬉しくないものである。



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修行、といっても生きるためにはゴミ山からある程度使える物を探さなくてはいけない。未来で生きるための修行と言ってもここで使える物を探してお金に変えなくては修行どころではない。死活問題だ。
だから私はゴミ山から物を探すときは円を使っている。先に四大行からとは言ったが、纏も練もできるのでやれることはやっておこうと考えた結果、ゴミを探すついでに円の練習を、となった。

今は半径2メートルで、1分もつかもたないかくらいにはなったが、最初のうちはやろうと思っても一朝一夕にできるわけがなかった。ゼノ爺さんが言っていた通り円をするのはかなりしんどい。でも既定の範囲なのでとりあえず“円”とは言える…はず。正直ちょっと自信ない。だけど時間はあと1年あるわけだし、この調子でいけば一通り、応用技までできると思った。


「あ、水見式やってなかった」


能力はどうしようか、と考えているところでそれを思い出した。自分の系統を知っておくのは大事なことだとわかっていたが、先に覚えないといけないことが多すぎて水見式のことがぽっかり頭から抜けていた。絶が下手くそなのは置いといて一応四大行はできるので、これ(物探し)が終わったあとにでもやってみよう。


*


「お前、ゴミ山から帰ってきたらいつも疲れてんな」


頑張ることはいいことだ、なんて絶対思ってもいないことを口にするラウさんに、じゃあこれ寄り合いまでお願いしますね、と集めてきたものを渡す。先程まで笑っていた顔が明らかに歪む。


「なんで俺が持ってくんだよ、自分で持ってけ」
「頑張ることはいいことなんですよ?」


にこりと笑顔を作ってやれば小さな舌打ち返された。袋を手に取って持って行ってくれるだけ優しいと思う。

往復3、40分くらいだろうか、早く水見式の準備をしなくては。私は急いでコップと水を用意し、葉っぱが無いので紙の端を千切って代用した。両手をコップに翳し、練をする。ごくり、喉が鳴ったのがわかった。
次の瞬間、ふわりふわりと目の前に浮かぶ“ソレ”に私は目を白黒させる。球体となった水が、浮いているのだ。まるでそれは透明のゼリーのようにも見えた。そっとコップの中に水を戻し触ってみるが変化は何もない。水見式を始める前の状態と何等変わりはなかった。


「…特質系」


トリップ特典か?もしそうだとしたら最悪だ。
とは言っても結果は結果。変わることはないので文句を言っても仕方がない。もしかしたら、という考えもあったのである意味納得のいく結果だ。

水が空気中に浮いたということは、水、空気、重力のどれかを操作した、と考えるのが妥当だろうか。なら私は操作寄りの特質系か?どうも扱いにくそうな系統だなあ。しかし水見式のあの反応から見ると特に重要な制約と誓約を作らずに能力が一つくらいできるかもしれない。


「まずはあれが水以外でも浮くのかどうか確かめないと」


私は先程千切った紙の本体に手を掛けた。


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