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「ナマエさん、なんでなんも言ってくれなかったんですか!?」
「え、な、なんのこと?」


会った瞬間食い込み気味にそう言ってきた荒船くんに気圧され一歩後ずさると、逃がすもんかというかのように一歩距離を詰められた。いやほんとに、なんで機嫌悪そうなの。私なんかしたっけ……。


「聞いたんすよ、こっち来る途中で、能力のこと」


後ろからゆっくり歩いてきていた穂刈くんが相変わらず特徴的な話し方で理由を話した。話したといっても能力のことを聞いたとだけ言われてはなんのことかもいまいちよくわからない。なんの能力を誰に聞いたんだ?と頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると「迅さんが、ナマエさんは俺たちに見せてない能力がまだあるって」と荒船くんが補足した。あ、あー、なるほど、そういうことか。能力が使えるとわかったんだから別に今更隠す必要もあるまい。隠してるつもりではなかったけど。


「うん、実はあるんだ」
「だからなんでそれを俺たちに教えてくれなかったんですか」
「いや、その、この世界で使っていいものかわかんなくて、それなら言わず使わずがいいかなって……ね?」
「でも結局迅さんには教えたんですよね」
「えー、だって迅くんのサイドエフェクトがそう言ってたらしくて」


あはは、と笑えば数秒間が空いて溜息を吐かれた。そんなショックだったのか、なんか意外だなぁ。たしかに荒船くんが私の先生だから能力に関して黙っていたのは少し申し訳なかったと思っているが、この世界で念能力を使ってもトリオン体に対してなら精孔が開かないと気づかせてくれた迅くんには感謝している。まさか彼がいくつかの未来を予想して視ることができるとは思いもしなかった。サイドエフェクトってすごいな。


「で、結局どんなんなんすか?その能力。教えてくれるんですよね、俺たちにも」
「いいけど、教えるのは荒船隊だけだからね」


迅くんにばれてしまったのはもうどうしようもない。自分の手の内をほいほいばらすようなばかはやりたくないのでほかのボーダー隊員には黙っといてもらうことにした。ていうかそんなばかやったら絶対何やってんだとジンさんに殺される。ぶるり、と身体を震わせると寒いのかと心配されたので首を横に降っておいた。違うんだ、この世界にジンさんはいないのに想像するだけで悪寒がするんだけで寒いわけではない。師匠怖い。

私の悪寒の原因を知らない荒船くんたちは私の能力がどういうものなのか気になってまだかまだかと待っている。そういえば荒船くんってアクション映画好きなんだっけ。能力とかってなるとそれっぽいしやっぱ気になったりするのかな。ていうかそれいったらボーダーの設定も十分それっぽいけど。あ、いいこと思いついた。


「加賀美ちゃん」
「?はーい」
「ちょっと今から訓練室使えるようにしてもらっていい?」
「了解です」


何をするのかと不思議そうにしている荒船くんたちににやりと笑って「言葉より行動ってね」と言うと、納得したかのように準備を始めた。


*


「こんなん反則っすよ。はぁ、ダルいわ」


無理やり参加させて真っ先に潰された半崎は口癖と愚痴を不満そうに溢しながら緊急脱出(ベイルアウト)していった。反則、確かに反則みたいな強さというかなんというか。なんであの人レーダーもオペレーターもいないのに俺らの場所がわかんだ。しかもレーダーには映っているはずなのに目に見えないって、カメレオンでも使ってんのか?4対1(加賀美含め)でいいよと言ったナマエさんをぎゃふんと言わせようとして結局こっちがぎゃふんと言わされていた。


『カメレオンか?』
『ないだろ、それは』
『わざわざ能力を見せるって言ったんだからあれがナマエさんの能力なんじゃないの?』
『……だな。そもそもカメレオンの機能はナマエさんには教えてないし。加賀美は引き続きナマエさんの場所をなるべく詳細に教えてくれ』
『了解』
『半崎は何か気づいたこととかなかったか?』
『あー、一瞬だったから確信ないしわかんないんすけど、あんま近距離戦には持ち込まないほうがいいかも』
『あ?ナマエさん強いのか、近距離戦』
『そんとき使ってたのがスコーピオンで、それが強いんじゃなくて、なんつーか、あー、説明がダルいすわ……』


こんなときまでダルいとか言わずに早く言え!と催促すれば、少し考えてから『触られたら変な感覚がしたっていうか、一気に身体がダルくなったんすよ』と答えた。どういうことだ?つまり身体に何かしらの変化をもたらす能力ってことなのか。そんなことを考えていると加賀美から焦ったように声が掛かった。


『荒船くん、背後5m以内にナマエさんが接近して「荒船くんみーっけ!」


***

レーダー・オペレーターなしで場所がわかる→円
レーダーに映ってるけど目に見えない→絶



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