Optimist | ナノ

WT サイドエフェクト

「ナマエさん、だったよね。今ちょっといいかな」


特徴的なサングラスを身に付けた青年が声を掛けてきた。彼の姿は尋問を受けたときいたので若いながらに地位がある人なんだろうと思っている。特にこれといって断る理由もないので二つ返事をして彼の後ろをついていくと、人が常にいるラウンジでも一際人気のない場所へ移動した。何か人には聞かれてはいけないことでもあるのだろうか、彼の顔はそれを物語っている。


「突然変なことを訊くけど正直に話してほしい」


あまりにも真剣な表情をするから、緊張でツバを飲み込むときにごくりと喉が鳴った。


「ナマエさん、ほかにおれたちには見せていない能力があるよね?」


その質問に思わず一瞬だけ眉間に皺が寄る。見せていない能力というと、もうそれは私の発しかない。それは明らかで、たしかに彼の言う通りだが、なぜそれを彼が知っているのか。この世界にきて使ったのはこの間の仮想訓練だけ。しかもそのとき念入りに部屋に隠しカメラがないこと確認してからやったので映像が残っているはずがない。この世界にもどっきり能力があることはここ数日過ごして知ったことだが――例えば村上くんの強化睡眠記憶とか――彼もまたその能力を持つ1人なのか。


「ごめん、きみ……えーと、」
「迅でいいよ」
「迅くん、ね。迅くんの質問の意味がわからないというか、それ、どういう意味?」


はいそうですと返さないことを予想していたのか、それとも私が何かの能力を持っていることに絶対的自信があるのか、彼は表情を崩さない。それからニッと口角を少し上げて、得意気のように迅くんは言った。


「おれのサイドエフェクトがそう言ってる」


prev / next

[ back ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -