Optimist | ナノ

ここへ侵入してきた人数は三人。見張りとして外で待ってるのが二人。侵入者の内の一人は念能力者のようで、実力はナマエと同じか、または少し上程度。これはナマエのいい修行になりそうだと俺は無意識に口角を上げていた。



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何箇所もの遺跡を荒らしていってるからか、三人は慣れた様子でトラップを確認しながら入ってきていた。


「俺の円の中に入ってるのに気付かないってことは気配に敏感じゃねぇのかもな」
「……でも弱くはない、ですよね」
「ああ。あと相手の念能力もわかってないから甘く見てっと足元掬われんぞ」


これは俺にも言えることだ。用心深いというか守りに必死になりがちなナマエの場合、甘く見るなんてことはないだろうが、たまに抜けてるところがあるから少々不安になる。だからといって簡単にやられるようなタマじゃないし、万が一やられるようなことがあれば俺が許さねぇ。そんときは丸一日腹筋と腕立てを命じてやろう。
念能力者の実力がナマエと同じくらいといったがナマエが決して弱いというわけではない。むしろこいつはかなり実力をつけてきている。ただ周りにいたのが俺とカイトだったからこそ、自分の実力がどれくらいあるのかをしっかりと把握できていないだけだ。まあ、逃げ足だけはピカイチだっつーことは本人も自覚しているみたいだが、逃げ足が速くてもなぁ……と思うところがある。


「念能力者の相手をするのと、非念能力者二人、どっちがいい」
「え、あ、えー……っと、一応訊きますけど、非念能力者相手に――」
「念能力を使うのは無しだ。修行になんねぇ」
「……ですよね」


ナマエはそれだけ言うと黙ってしまった。いや、正確には小さく唸っている。念能力に頼らず二人を倒すか、それとも念能力を使って自分より強いであろう念能力者を倒すか。俺は簡単な選択肢は絶対に与えてやらない。


「因みにあいつ、お前より実力が上かもしれないがカイトよりは下だから安心しろよ」


俺はいいことを教えてやったつもりだったのに何故顔を顰められたのかと考えたがナマエの言葉でなるほどと理解した。


「私があの不意打ちで念能力を使ったとき以外カイトに勝ったことないの知ってて言ってるんですか」
「……適度な緊張感ってのは大事だろ?」
「むしろ緊張感しか持ち合わせてないですよ」
「じゃあ少しリラックスしてからあの念能力者に行けよ。あ、リラックスと気を抜くってのは別もんだからな」
「何がじゃあなのかわからないし、なんで私が念能力者に行くことになってるんですか!」
「なんでってそりゃあ、俺とカイト以外の念能力者と戦えるいい機会だからだろ」


そういうと自分の中で納得した部分があったんだろう、ナマエは一瞬固まって、項垂れながら「わかりました」と低い声で答えた。ぶっちゃけ非念能力者と戦ったところで纏をしているナマエのほうが防御力、攻撃力共に高いからあんまり意味がないってのが本音だが、それを言えばこいつは相手が二人だとしても確実に非念能力者にしただろう。だからそれに気付く前に俺が絶妙な言い訳――別にナマエに言ったことが嘘というわけではない――を考えたわけだ。


「その代わり俺が外の二人も倒してやっから」
「それでもジンさんならあっという間に終わりますよ」
「ところで、」
「うっわ、無理矢理話逸らそうとしてる……」
「と・こ・ろ・で、あの通路からここまで、トラップがいくつ仕掛けられてるか覚えてるか?」


今までのおさらいかのように訊いてみれば、ナマエは考える動作をしたものの出入り口で常に通っているからか「あっちに二つ、こっちに一つ、ですかね」とすぐに答えた。


「よしよし、因みにどんなトラップかは?」
「誰が記録してると思ってるんですか」
「ほぉう。じゃあ、その言葉に期待して聞かないでおく。忘れてねぇと思うが、その場を把握している奴のほうが有利に立つし、何よりそれが武器となる。しっかり頭使えよ」


ポンポンとガキにするかのように二回、ナマエの頭を叩いた。返ってきた返事は相変わらず頼りないため気が抜けて笑いそうになる。しかしここで笑ったら気を抜くなよと言った側として説得力に欠けるため俺は笑うのをぐっと堪え、ナマエと念能力者が一体一で戦えるよう考えた作戦をナマエに伝えた。


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