Optimist | ナノ

辺りをぐるりと観察して見えるものは草、木、頼りない一本道、そしてククルーマウンテンである。



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「はあああ!?」
「うるせぇぞナマエ」
「え、いや、だってジンさん、ククル、え、ねぇ、カイト!!」
「ハンター語で頼む」


何から言えばいいのかもうわからない!イメージ力をつけるために適した場所はあるのかという話になったとき、ジンさんが噂でしか聞いたことはないがそれが本当なら丁度いいところがあると言った。そしてその場所が試しの門、そう、ゾルディック家のアレである。何言っちゃってんのこの人。原作を見ていたから知っているがその噂はたしかに本当で、トン単位の扉なのだが、そこを修行場所に選ぶジンさんは自分の言ってる言葉をちゃんと理解して話してるんだろうか。


「いや、あそこってアレですよ!?暗殺一家のゾルディック家ですよ!?」
「別に殴り込みに行くわけでもないし、ちょーっと扉を使わせてもらうだけだろ」
「なんでそういう軽いノリなのか理解できない…!」
「……それは俺も同意だな」


カイトもそこが暗殺一家の家だということに少し戸惑っているようだが、これは私の修行内容についての話なので自分はあまり関係のないことだと思っているところもあるようだった。ほんとこいつら…!!

嫌だ無理だと言ってもジンさんは聞く耳持たず、思い立ったが吉日、明日出発するから準備しろと私とカイトに告げた。カイトはまさか自分まで行くことになっているとは思ってもいなかったらしく、全力で抗議したようだがそれは無意味な時間だった。ジンさんはその扉の噂が本当ならカイトは何トンまで開けれるかが気になるらしい。私としてはそんなことを言っているジンさん本人はどうなのかと気になるが、この人なら7の扉まで開けることができてもおかしくないと思う。


そうこうあって、今、試しの門の前に立っているわけだが、何かされているわけでもないのに威圧感がすごい。この門の向こうにミケがいるのを知っているから余計に開けたくない気持ちが膨らんでいた。ミケの存在を知らなかったらどれだけ救われたことか…。


「ジンさん、まだ遅くはないです。帰りましょう」
「ナマエ顔色悪いぞ?大丈夫か?」
「話逸らそうとして優しいふりしても駄目ですよ…!」


とはいっても、鏡は見てないが本当に顔色が悪い気がする。だって怖いよ。そういえばあの門番のような人はゼブロさん?だっただろうか。名前が合っているかわからないがゼブロさん(仮)として、そのゼブロさん(仮)からめっちゃ見られてるんですが、どうすればいいんでしょうかねこの状況。でもゼブロさん(仮)は門番のように見せかけて実は掃除夫だったはずだ。ほら、あの、ミケが食べた侵入者を掃除する役の……。その侵入者のポジションが自分になってしまったらどうしようと想像してしまい、背筋がゾッとした。いや、大丈夫。ゾルディック家の敷地内に入るつもりはないし、そもそも私ちゃんと正門開けれるように頑張るから…!と、ここまで考えて自分が試しの門も開けるつもりでいることに気付いて思わず自身の頬を両手で叩いた。


「死ぬ気か私…ッ!」
「何さっきから一人でボソボソ言ってんだお前」
「え、声に出てました?」
「なんて言ってるか聞こえなかったけど確実になんか言ってた」


どこから声に出ていたのかさっぱりだが、よかった聞こえてなくて。ふう、と安堵の息を吐いたところでゼブロさん(仮)がこちらに向かってきていた。ああ、違うんです別に賞金首ハンターとかそんなんじゃないんです私達……!


「ゾルディックに何か用ですか?」


話し掛けてきたゼブロさん(仮)の顔は穏やかで、一見人柄が良さそうな普通のおじいさんのように感じられた。それからすぐに、私はこの門の警備を担当するゼブロという者だと自己紹介してくれたため、私の中でゼブロさん(仮)改め、ゼブロさんになった。最初は私達のことを賞金首ハンターかと思って様子見していたようなのだが、いつも見るような賞金首ハンターとは違い壁を壊そうとする動作はおろか、一向に動く様子もなくもしかしたら本当に客人か何かなのかと思い話し掛けてきてくれたらしい。原作でもゴン達に優しかった気がするので、死体を片付ける掃除夫であろうと、やはりいい人なんだろう。


「ゾルディックに用があるわけじゃないんだが、この扉をちょっと使わせてもらっても構わねぇか?」
「……試しの門を何に使うんですか?」


使わせてもらうと言って実は他の賞金首ハンターを入れるようならただじゃ済まされない。そんなことをさせるくらいならゼブロさんはきっと、そっちの扉じゃなくともこの鍵であそこから入れますよと、そんな演技をしてくるだろう。しかし真剣な顔付きのゼブロさんを裏切るかのようにジンさんは親指で私を指しながらあっけらかんと言った。


「ちょっとこいつらの力を見たいだけ。扉を何回か開けたらさっさと帰るから警戒しなくていいぜ」


このときのゼブロさんといったら、頭にいくつものクエスチョンマークを浮かべているただのおじいさんだった。


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