Optimist | ナノ

頑張ってね、なんて微塵にも思ってないだろ、あの顔。こんな状況だけど無性に腹が立ったのは確かだ。



13



薄暗い路地に残っているのは精孔が開いてしまった私とおっさんの死体。どういう足の速さしてんだ、と言いたくなるような速さでイルミは目の前から消えた。


「精孔…開いちゃった…」


やばい、やっと開いたのかよ精孔チャン!とか言ってしまいたいとこだが生憎今はそんな余裕なんてなかった。あんの野郎覚えてろよ。いや、覚えられたくはないからやっぱいい。ああ!くそ!そんなことより今は纏をするのに集中しろ私!

目を閉じて、オーラを感じる。私はその場に座り込んだ。血液が全身を巡るイメージ。いつもしていた瞑想を思い出す。瞑想のとき、ひたすらこれだけをイメージしていた。そうすると不思議と包まれるような感覚がして落ち着いていたからだ。
先程までの体から何かが出ていくような感覚が、ふと止まる。ゆっくりと目を開くとオーラが全身を包むように留まっているのがわかった。


「よかった…」


思わず、ほっと息を漏らしたが、安堵したのも束の間、急な不快感に襲われる。精孔が突然開いた反動なのか、今にも嘔吐してしまいそうだ。私は覚束ない足取りでラウさんのいる店へと足を向けた。


*


「……ラ…ウ、さん」
「なっ、どうしたナマエ!?」


私の顔を見るなり、ラウさんは驚いた顔で椅子から立ち上がった。え、ラウさんがここまで驚くってどんだけ私顔色悪いんだ。手元に鏡がないので見ることはできないが、ラウさんがいつもより優しいのでそこはよしとしよう。思わずへへへ、と笑みがこぼれるがそんな私を見てラウさんは怪訝そうな顔をする。


「なに笑ってんだ、気色わりぃ」
「う、わ…ぐあいわるい、ひとに、そのたいど…ラウさん、さいてー…」
「言い返す元気があるならまだ大丈夫だな」


この人は人に優しくする精神は持ち合わせてないのか。せめて米粒くらいの期待はさせてくれよ。と、文句を言いたいとこだがこれ以上喋ると吐きそうだ。ふらりと倒れそうな体をラウさんが支えてくれた。
この街に来て、どれくらい時間が経ったかわからないが、もう一時間経っている気がする。今お仕事の邪魔になってたらどうしよう…。寄り掛かったまま見上げると背の高いラウさんのせいで少し首が痛い。そんな私の視線に気づいたのか、ラウさんは少し目を細める。ん?今微笑んだ?


「もう用事は済ませたからさっさと帰るか」


そういって私の前に屈むラウさん。え、これは、おんぶしてやるよ的なあれですか。


「チッ 何してんだ、さっさとしろ」


このラウさんの行動に思わず固まっていると、それに苛ついたのか盛大な舌打ちをして催促された。いや、歩けます。なんて言おうとしたのに、いや、という時点で睨まれてしまい私は強制的にラウさんにおんぶしてもらう羽目になってしまったわけで。


「…ラウさん…はずかしい、です」
「病人は黙ってろ」
「…ぐあいが、ちょっと…わるいだけ、ですよ」
「黙れっつってんだろーが」
「…はい」


なんだこの人。優しくしてるのか脅してるだけなのかどっちかにしてくれないか。ああ、絶対重いだろうな…こういう時の為にダイエットしとけばよかったかもしれない…。傍から見るとおんぶされてる今の私は宛ら子泣き爺といったとこか。

ラウさんの歩く振動が心地よいせいで、睡魔が私を迎えにくる。うとうとしてるせいで背中に顔が何度か当たると眠いのを察してくれたのか、寝ていいぞ、なんてラウさんが言うから気づけば私は夢の住民になっていた。


背中から感じる体温が、すごく優しくて、心地よかった。


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