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私は特質系で……はいそこ、ジンさん、見えないとかあからさまに思ってる顔を表に出さない。カイトを見習って…って言いたいけどカイトの顔も少しは我慢しろ。……で、私の発は“重力崩壊(ﾘﾄﾙｸﾗｯｼｬｰ)”。どういうのかと簡単に言えば、対象者・対象物の重力を操る能力で、重さを自由に変えられる。
制約として対象者・対象物に触れてなくちゃいけないが小さいものであれば直接物体に触ってなくてもオーラを翳すだけで可能。たとえばコップに入ってる水とかね。
能力を発動して一度重力を変えたものは私の円の範囲内であればもう一度触れずとも重力の重さを変えることができるし、手を離してもその重さを保つことができる。だけど無限に能力を有効にすると能力自体が弱くなってしまうから、私を中心として半径一キロメートルで完全に能力が解除されるようになっている。あと、距離ができる間もじわじわと解除される。もちろん、私の意志で解除することも可能。
「それだと能力に対して制約が弱くねぇか？」
一つ目の発を全て説明し終えて飛んできた最初の言葉がこれだ。重力を操るってだけで結構チートな感じしかしなかったけどやっぱりこれだと弱いんだろうか。ということはそれ相応の面倒臭い制約が必要になってくるんだろう。
「やっぱそうですかね」
「触んなきゃいけねぇってのは別にいいと思うけど、能力を発動してからの有効範囲がまだ広い。徐々に解除されていくんだろ？そんなのお前が離れていく間に相手は自力でどうにかできる。それなら最初からもっと範囲を狭めるか何秒または何分までってのをきっちり決めたがいい」
「……無駄は省けってことですか」
「そ。どうせそのぐだぐだやってんのって保身だろ？相手が強ければ強いほどそんな保身、意味もなくなる」
確かにそうだ。もし念能力者と遭遇して、危険な状態になったらできれば逃げたい。でも追いかけられて捕まってしまったら、と考えていたのが反映されたのだ。少しでも、少しだけでも保身になるようなことがあれば、と。逃げてる間も私の能力が相手に効いているというだけでまだなんとかなるかもしれないと安心できる。しかしそれをジンさんは無駄だから省けというのだ。
「でも、」
「いいか？お前もさっき自分で言ってたからわかると思うがよ、ナマエの能力は無限に使えれば強いかもしれねぇが、無限に使おうとすれば弱くなるんだ。でもな、逆に考えれば、接近戦で一度触れてしまえばお前の勝ちってことだろ」
そう言ってニヤリと笑ったジンさんは私が負けることを想像してないような口振りだった。
「ナマエはこの俺が修行つけてやったんだぜ？そうそう簡単に負けるようなら俺が許さねぇよ」
どこからそんな確証を得てるのかと思うが、ジンさんは自分自身を信じて言っているだけだろう。なんというか、さすがジンさん。「はいはいそうですね」と呆れて笑えば「負けたときは腹筋腕立て背筋を二千回ずつと全力疾走二時間な」と鬼みたいな内容を提示されたので全力で負けないように頑張りたいと思う。そう考えていると、先程まで黙っていたカイトが口を開いた。
「……じゃあ、あのときお前が俺に使った発が“重力崩壊(ﾘﾄﾙｸﾗｯｼｬｰ)”ってことか」
「あのとき？」
「ここにきて、俺を捕まえたときの」
ああ、そういえば。カイトに言われてそうだったと思い出す。ああでもしないとカイトは捕まえられなかったに違いない。あのときカイトの重力を変えたが、私のイメージとは違いカイトは膝をつく程度で終わった。今思えばそれはジンさんが言った制約が弱いというのが原因だとわかる。
「そうだよ。でもあのとき本当はカイトにもっと重力をかけたつもりだったんだけど、膝つく程度で終わっちゃった」
「？でもナマエと俺は距離が離れてなかったんだから能力としてはちゃんと発動してるはずだろ」
「……そっか」
あのとき私はカイトとほぼ距離なんて無い状態だったからほぼ百パーセント私の能力が効いててもおかしくない。私自身にその能力を使っても問題なく発揮されていたし、ハンター試験で一度だけ非能力者――一次試験でシャルに操られてしまっていた受験者――に使ったがそのときも問題なかった。それなのになぜカイトに使ったときはちゃんと効いてなかったのか。カイトが念能力者だから？しかしそうなると私の発は意味がないじゃないか。考えてもわからず私はヒント、というよりほぼ答えを求めようとジンさんを見た。
「……あ？なんだもうちょっと考えろよ」
「…考えました、けど、わかりません」
「じゃあとりあえず出たとこまででいいからナマエの意見を聞かせろ」
「……カイトが念能力者だったから？」
それだけを言うとジンさんは「ほぼ考えてないのと変わんねぇだろそれ！しかも疑問系！」と笑った。
作ってしまった発の内容を変更するのは可能なのかわかりませんが、とりあえず可能ということで話を進めさせていただきます。
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