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午後に練とかくれんぼしかやらないなんて時間があまるんじゃないかと思っていた時期(昨日)が私にもありました。



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私ができる練の時間は三十分だと言ったがあくまでそれは倒れず尚且つ身体がこれ以上は駄目だと危険信号を出せばやめた時間が三十分なのだ。自分の本当の限界なんて試したことなんてない。それなのに今私は意識飛んでもいいから限界までやれとジンさんに無茶難題を出され実行中である。しかも、三度目。

一度目はやめようとしたところでやめるなよとジンさんの声が掛かり汗だくになりながら続けていたらいつの間にか意識を失っていた。目が覚めたときお前が言ってたのより五分伸びたぞと教えてもらったが正直嬉しく感じなかった。
二度目は意識を取り戻してすぐにやらされ一度目の疲れが身体にきてたせいか、三十分どころか十五分程度しか保てなかったし、案の定再び意識を手放した。
そして三度目、一度目も二度目も私が倒れている時間は短く、そのせいでまだ時間あるからもう一回と練をやらされていた。時間はあるが体力的にはかなり限界がきていて身体は悲鳴をあげている。三度目の正直とも言うが私の場合は二度あることは三度あるのほうで、まもなくブラックアウトするだろうと直感的に感じた。


*


「おはよ」
「……おはよう」


いつの間にか木陰に移動されていたらしく、私は炎天下をもろともしない涼んだ場所ですやすやと眠り呆けていた。近くにいたカイトは私が起きたことに気付くと声を掛けてくれたが、まだ今日の修行が終わったわけでもないというのにジンさんの姿は見えなかった。


「ジンさんは?」
「ちょっと出てる。たぶんあと三十分もしないうちに帰ってくるだろ」
「私のことはなんか言ってた?」
「おう、『俺が帰ってくるまでは休憩させといてやる』って一応伝言はもらってた。よかったなジンさんが帰ってくる前に起きて」


ほんとそれな!もしジンさんが帰ってきても私がすやすやと寝ていたらきっと叩き起こされたに違いない。ジンさんの起こし方は容赦ないのだ。だから何度か体験した私はできることなら常にそれは避けたかった。
というかジンさんが帰ってくるまでまだ三十分近くあるのか。その間にだいぶ体力が回復しそうだなと思いながら私は柔軟を始めた。気絶してたのだから寝てたという表現で合っているか微妙なところだが起きたばかりの身体はやはり硬かった。


「カイトはさ、気配消すのも察するのも上手だよね」
「そうか?」
「うん。私が下手だからわかりやすいだけなのかもしんないけど、一次試験のときも一応絶して木の上で寝てた私見つけたでしょ」
「あー、そうだな。でもお前がここにきて小屋で待ち伏せしてたときは気付かなかったぞ」
「それはカイトが警戒の“け”の字もなくて油断してたからじゃない?」


おかげで私は弟子になれたからラッキーだったんだけどね、と笑ってみせれば少し悔しそうなカイトの笑顔が返ってきた。油断してたなんて私に言われるのは耳が痛い話だろう。一次試験ではジンさんに鍛えられた野性の勘なんて言ってたけどたぶん私の絶が下手なせいでオーラが少し漏れていたのかもしれない。それをなんとなくカイトが察したんだと私は思う。


「……ナマエは絶が下手とか、練が難しいとか言うけどオーラのコントロールがうまいよな」


私はその言葉に目を瞬かせているのにそれに気付いていないのか、ふと思い出したように話し出したカイトは言葉を続けた。


「寝ながら絶ってのは割と難しいんじゃないか?寝るときってのはリラックスしてしまうことが多いからな。それにたしかナマエの円は範囲が広いだろ。絶があんな感じなのに絶より複雑な円を広範囲でやれるってのはすごいと思う」


……ほ、褒め言葉のバーゲンセールですか!?カイトにここまで褒められたのが初めてで思わず録音したくなる。録音機器とかないので脳内で頑張って録音しとくねカイト!!と、私の脳内は騒がしいとこになっているが顔と脳が一致せず未だにぽかんとアホな顔で私はカイトを見つめていた。そんな私の視線に気付いたカイトはわざとらしくコホンと一つ咳払いをした。


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