Optimist | ナノ

気付けば暑い夏が顔を出し始めていた。



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あれから早数ヶ月…見事な人外生物になりましたナマエです。適応力が高いのか、これがこの世界の基準なのか、どっちかわからないが私の成長の伸びはかなりいいほうだと思う。ジンさんにむしろ遅いと言われた記憶は片隅に追いやっても怒られまい。


「そろそろ念能力に入るぞ」


恒例のストレッチ中にジンさんから出た言葉が一瞬なんのことかとポカンとしてしまった。念能力…?……念能力!ここ数ヶ月、念能力を使わずに生活していたせいでそれが普通となってしまいそういえばそんなものあったなと言いたくなるレベルで忘れていた。


「止まんねぇでストレッチ続けろ。念能力つっても基礎と応用をまずは鍛えるからナマエの能力鍛えんのはまだ先の話だ」
「あー…ですよね」
「ああ、ある程度できたらあとはお前の能力に合わせて修行内容を組み込むつもりだから」


じゃ、午前はいつも通り走り込みと筋トレで午後は組手を一時間やってそれから念修行な。と、さも当然かのように言うジンさんにも慣れてしまい私は間延びした返事だけを返しながら柔らかくなった身体を前倒しにしながらペタリと地面につけた。ちなみに今の走り込みとは朝一発目の二時間ランニングではなく全力疾走のほうだ。最初のほうこそ遅いだの脚力がないだの散々言われたが実は才能があったのか、走ることだけは自慢できそうなほどかなり素早くなりジンさんやカイトには正直驚かれたし私も驚いた。ただしジンさんより早く走れるわけがないので未だに走り込みは続いている。俺より早くなったら自慢してこいと言われたため私はこの走りを自慢できる日はこないだろう。


*


「とりあえず四大行からやるつもりだが、まあナマエの纏は綺麗にできてるから問題ないな」


ファッ!?珍しくジンさんから褒めのような言葉をもらって奇声を上げそうになる。自分でも綺麗にできてるほうだとは思ってたけどジンさんから見ればまだまだだろうと考えていたので予想外の言葉に思わず動揺してしまう。


「最初に会った頃は独学のわりに綺麗なほうだとは思ったけどそれからすればかなりよくなったと思うぞ」
「……私ジンさんに修行見てもらってる間は念修行やってませんよ?」
「んなのわかってるっての。寝る前に必ず点…瞑想しろっつってただろ。それのおかげだ。あと絶は完全に一般人か馬鹿な動物なら騙せられる程度だな。それ以外の奴らには無理。お前の絶壊滅的に下手だから」


ああなるほど、と頷きかけて後の言葉に胸をグサリとやられた。…言われなくても知ってますが?とは反論せずに小さく返事を返す。それを見かねてなのか、この森の動物達から逃げることばかりしていた私は最初よりましになったと教えてくれた。ミリ単位らしいが。うん、言わなくてよかった情報だと思います。
練についてはまだ見てもないからわからないと言われたが練を見る前に先に絶の修行に入るらしい。絶に修行方法なんてあるんだろうか。そんなことを考えて質問したが最後、素敵な笑顔が私を捕らえた。


「二時間、俺とかくれんぼして見つかり次第腕立てでも腹筋でも俺のそのときの気分でペナルティを決める。とりあえず最初だからな、回数は一回見つかるごとにプラス500回。見つかった回数分二時間後に全部まとめてやってもらう」
「ジンさんに見つけないようになんて無理に決まって、」
「そこは俺も甘く見てやるから、見つかんねぇように頑張ればいいだけの話だろ?」


見つからないように頑張るなんて、そんな簡単な話ではないと思う。念の修行が始まるというのにやはりいつも通り筋トレさせられている自身の未来を想像するのは容易だった。


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