Optimist | ナノ

好奇心旺盛なとこを善処します。そう心に決めた今日この頃。



11



ラウさんが明日、用事で街に行くから連れて行ってやると言った。流星街から出るのも久しぶりなので少しだけ遠足の前日みたいな気分だ。
ただ少し引っかかることがある。こちらにトリップしたときにその街で出会ったクロロのことだ。数ヶ月も前の話だし、そんなに長居はしていないだろうが、不安と言えば不安である。正直、会いたくない。


「俺は一時間くらいここにいるから終わるまでぶらついとけ」


そういうとラウさんは店の中に入っていってしまった。どんな仕事をしているのかしらないが、たまに真面目に働くラウさんは中々にレアだと思う。ラウさんの詳しい事情はよく知らないのでわからないが、ラウさんも私のことについて詳しく聞いてこないのであまり気にしていない。それに、この数ヶ月を共に過ごしてみて、ラウさんが危険な人物ではないことくらいわかっている。

ぶらついとけ、と言われても街の地形もよくわからないのでぶらつきようがない。数ヶ月前この街に来たのは確かだが、どこになにがあるのか確認できるほどの余裕なんて私にはなかった。はっきりと記憶にあるのは街から少し離れたとこにある、あのときの廃墟くらいだ。とはいってもここから30分くらい歩く羽目になるので行かないが。


「今見ると綺麗な所だなー」


この街のレトロな雰囲気が気持ちを落ち着かせてくれる。外国の街並みはどうしてこうも綺麗なんだろう。ここの人たちからすればこれが普通なのかもしれないけど、日本人の私からするとこの街並みを観てるだけで十分楽しめる。


「あぁ、でもこっちだとジャポンは江戸っぽい雰囲気なのかも」


それはそれで興味深い。ま、存在もない今の私なんかがジャポンなんて行けるはずがないんだけど。念をしっかり体得出来たらハンター試験を受けに行ってみようか。念を知っているなら受かる可能性も幾分上がるかもしれない。死ぬかもしれなかったらリタイアすればいい。ああ、そうなると体力はつけておかないと。まだ精孔も開く様子はなさそうだし、体力をつけるのも同時進行で行えば丁度いいだろう。


―――ピュッ

顔を少し上へ向けようとした途端、頬の横を何かが通過した。急な出来事に虫が高速で通り抜けて行ったのかと思ったわけだが、うん、絶対違うよな。何が私の頬を掠めたのかは定かではないが、横の少し薄暗い路地から飛んできたのは確かだった。こういうとき、好奇心旺盛な自分をばかだと言いたいが、気になるものは気になるので不思議と足をそちらへ向けてしまう。


「た」


その男はあまりにも突然現れたため、私は驚愕の声も出なかった。男の、た、という言葉のあとに“す”という言葉が微かに聞こえたが、それとほぼ同時、またはそれより少し早いくらいか、トストストス、と何かが刺さるような音が聞こえてきた。目の前の男が倒れる。なにが起こっているのか、状況が全く把握できていない。私は倒れた男を見つめた。――死んで、る?
倒れた男の背後には、頭から喉に掛けて深く、針が刺さっていた。先程“何か”が頬を掠めたのを思い出す。ふと頬に触れると少量ではあるが指に血が付いていた。


「こいつの仲間?」


12年後とかただの寝言でした。私ここで死ぬかもしれない。ああ、もう最悪、誰か夢だと言ってくれ。
私の反対側に立つのは黒髪で無表情の少年。

―――イルミだった。


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