Optimist | ナノ

例えば、某バスケ漫画の主人公のように私も限りなく影の薄い子だったのならば、私の絶は簡単に完璧なものにできたかもしれない。



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あの二人がいつ帰ってくるかもわからないし、私が多少オーラを感知して気配を読むことができたとしても絶をされれば絶対わからない自信あるし、なんかもうつらい。いや、こんなことに自信持っちゃ駄目なんだけどもね。というか、私の下手くそな絶でどうにかして二人にバレないようにしなくちゃいけないわけだけど、それに神経使いすぎて精神的にめっちゃくるんですがどうすればいいんですかね。

漫画ではたしかゴンもキルアも絶とか余裕でやってたし、しかもそれで尾行していたわけだから(バレちゃってたけど)…とか思ってた時期もありましたけど!あれだよね、野生児や暗殺者を一般人に毛が生えた程度のやつと一緒にするなって話だよね。そもそも彼ら主人公だしね。


「……つら」


ボソリと呟いた言葉は冷たくなってきた空気の中に消えていく。一人体育座りでそんなことを考えるのはなんだか寂しく感じる。寒さのせいか、寂しさのせいか、ひと肌が恋しくなって、ただただ私は膝に顔を埋めるだけだった。はぁ、ラウさんに会いたい。


*


数分か数十分が経った、と思う。うたた寝をしそうになって何度も睡魔と闘っていたため、実際どれくらい時間が経ったのかわからなかった。しかし外から微かに聞こえてきた音で睡魔は一瞬にしてどこかへ行ってしまった。ここでひたすら二人を待っていた間に聞こえてきたのは風に揺られる草木の音だけ。しかし今聞こえた音はそうではなかった。カサカサと鳴るそれは明らかに人が踏むような音に思え、段々と近付いてくるようだ。…音を立てて歩いてくるくらいだし、私に気付いてないのかもしれない。なんて、喜ぶ暇はない。オーラが漏れてしまわぬよう、息を殺すように絶に集中した。

扉の真横にいた私は、座っていた体をゆっくりと立ち上がらせ、壁に背を預ける。ここの扉はたしか内開きだった。だから二人の内どちらかが扉を開ければ自然と腕や身体が室内に入ることになる。その瞬間、少しでも身体に触れることができれば…私の勝ちだ。ドクドクと鳴る心臓に荒くなりかける呼吸、緊張からか時間が長く感じ、そして、

――カチャリ、

レバーハンドルが動いた。


「………ッ!?」


完全に開け切った扉が閉まることはなかったが、目的の人物にはあと少しのところで触れることはできなかった。無意識に舌打ちをして追うようにすぐ外へ出ると、逃げられてしまっただろうかという不安は消えた。扉から少し距離をとって私を驚いたような顔で見てくれる姿に思わずにっこりしてしまう。


「……吃驚した?カイト」
「なっ、んで、お前が…!」


家の中にいるのか、と言いたかったんだろうが、カイトはハッと何かを思い出したかのような顔をした、が、遅い。最初に触れようとしていた時点で念能力を発動していた私は飛べばすぐ触れられる距離のカイトの胸に飛び込んだ。さすがカイトと言うべきか、すんでのところでそれを回避したのは反射神経がいいなあ、と感心するところではあるが、私に体の一部を触れさせたのは詰めが甘かったな!フハハ!
ズドンッと鈍い音を立ててカイトは地面に膝をついた。あれ?膝をつく程度の重さだっただろうか?おかしいなと思いはしたものの、とりあえず今はカイトの肩を抑える。


「はーい、カイト捕まえたー」
「………ギメイの能力か」
「ふふふー」


もうバレてしまっているかもしれないが是とは言わない。ただ笑って返せば、その返事として溜息を頂いたのでもう大丈夫だろうと“重力崩壊(リトルクラッシャー)”を解除した。

カイト、ゲットだぜ!


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