Optimist | ナノ

何が悲しくてクリスマスに修行なんてやってるんだろう。前の世界では仕事でクリスマスが潰れていたがこちらに来たら来たで修行に潰されることになるとは。まあ今日何かがあるわけでもないし、期待も何もしていないけど、気分的だけはと思ったのだ。


「年に一度のクリスマスなんですよ?今日くらい修行休みましょうよ!?」
「だーかーら!宗教が関わってるわけじゃあるまいし、必要ねえだろ!!」
「宗教関係なくても私の気持ちはメリークリスマスなんですってば!」


プレゼントもケーキもツリーも飾りもいらない。休みがほしいだけ。こんなにいい子にしているというのにサンタは欲しいものを一つもくれやしない。ここでのサンタがジンさんだというのが悪いのかもしれないが。


「カイトも休みたいって言ってた!」
「は!?言ってないだろ!」
「これくらい話合わせてよ!」
「俺を巻き込むな!」


先程までの私とジンさんの会話(という名の言い合い)を半ば呆れ気味に傍観していたカイトは突然自分の名前を出され、さらにはジンさんから許可を得るために使われたことに驚いたらしく、私と同じように大声で言い返してきた。そんなムキにならなくてもいいじゃん!しかし突然、ジンさんは折れたように溜め息を吐いたことでピタリと声が止む。


「しょうがねえな…」
「え、ジンさん」
「安心しろカイト、修行はいつも通りやる」


別に修行をするしないの心配をカイトはしてるわけじゃなくて、え、あのジンさんが折れたの?って感じの反応だと思うんだけど。


「今日の飯当番はナマエだったけど俺がしてやるからそれでいいだろ」
「そういうことじゃなくて、」
「さ、そんじゃ再会すんぞー」


私の話を無視したジンさんはこの話は終わったから切り替えろと言わんばかりに手を叩いた。


*


飯の調達に行くと言ってジンさんはいなくなり、この場には私とカイトの二人だけになってしまった。
ジンさんが作ってやるとは言っていたがいつも通りの男料理になるんだろうな。別にジンさんの料理が嫌なわけではないが、それを片付けるのは誰だと思ってるのか、台所が汚れるのが容易に想像できて晩御飯を作るよりも億劫だ。


「ナマエ」
「ん?」
「今日何かあるのか?」
「…いや、別に」


何もないけど。
カイトはわざわざジンさんがいなくなるまで訊いてこなかったのか、それとも偶然ジンさんがいなくなったときにそう思ったのかはわからないが、どうして急にそんな質問をしてくるのか私にはわからなかった。


「なんでそう思ったの?」
「…カリカリしてただろ」
「だって毎日修行漬けで休みがないからー」
「こないだ街に行ったときが、」
「いや、あれ一ヶ月以上前だからこないだって言わないし、半分は修行の一環だったでしょ」


思い当たる節があったんだろう、カイトは黙ってしまった。それにカイトはジンさんを見つけだすという最終試験が残っているからさらに大変になるかもな。ジンさんはそれっぽいことをカイトに言ってないからいつ頃始めるのかはわからないけど。
何か思ったのか、カイトはキャスケット帽子を被り直すと、私より長い髪が揺れた。…伸びたというか、原作に近くなってきたなぁ。


「まあ、その、なんだ…」
「はい、なんでしょう」
「疲れてるんだろ?肩揉んでやるから落ち着けよ」
「……………ありがとう」


言いたいことはあったがカイトの優しさを無下にするわけにもいかず、口を閉じることにした。

Do you know what today is?
二人とも母の日と勘違いしてません?


prev / next

[ back ]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -