Optimist | ナノ

人間も動物もこの世界は水準がおかしい。



117



歩き続けて数時間が経ったが辺りは相変わらず真っ暗なままだった。考えてみれば、私だけじゃなくあの二人も絶状態になっている可能性は大いにある。もしそうだとすればあの二人の気配もオーラも感じとれる自信はなかった。


「ふあ…」


大きな欠伸が漏れる。飛行船で寝ていたとはいっても、数時間足場の悪いとこを歩いていた私は思ったより体力を消費していた。寝るか否か。ここで寝てしまえばチャンスを削ることになるかもしれないが、このまま起きていて日が昇ったときに疲れきってては意味がない。携帯を覗いてみるといつの間にか日付は変わり一時を少し過ぎていた。…仮眠、しようかな。がっつり睡眠を取るわけでもないしその程度なら大丈夫だろう、たぶん。

このまま地面で仮眠は取れないので木に登ることになるがそうなると念能力を頼らなくてはいけなかった。突然私が絶から纏にすると、二人が近くにいた場合思い切りバレてしまう。そうなってしまっては困るので気休めではあるが私はじわじわとオーラを戻していった。存在がハッキリしてしまうのはどうしようもない。念に頼り切って体力以外何も鍛えてなかった自分が悪いんだから自業自得だと思う。


「……おやすみなさい」


やっとのことで登った木に寄り掛かり、左耳に付いている青いピアスに軽く触れてから小さく呟いた。


*


――ドシンッ


何かがぶつかるような音と、地震のような揺れが私を襲った。驚いてバッと目を開けると辺りは薄らと明るくなっている。…え?あんなにも暗かったのがたった少しの仮眠でこんなにも明るくなるわけがないと急いで時間を確認するとここは日が昇るのが早いのか、もうすぐで五時半になるところだった。しかし明るくなるのが早い遅いは至極どうでもよく、もうすぐ五時半だという事実が問題だった。

……私、仮眠ってレベルじゃないくらいぐっすり寝てた?

やってしまった、と自己嫌悪になりそうになるが、その前に私を起こした原因…この場合私を起こしてくれたナニかがもう一度音を立てて私を揺らす。地震のようなと思っていたそれは私が眠っている木だけに起こっていた現象で、地面はおろか、他の木々も一切揺れていなかった。私が恐る恐る発信源である木の根元に目を向け他の神経も集中させると、コフーコフーッときつそうな鼻息を出している生物が目に入った。


「イノシシ!?」


体や牙の大きさから果たして本当にイノシシなのかは定かではないが、全体的に見れば私の知っているイノシシと全く同じ姿だった。この密林に危険な生物がいてもおかしくはないが、どうして木の上にいた私がこうも簡単に見つかったのか。それはイノシシの鼻を見れば容易に想像ができた。降りてこいと思っているのが、再びぶつかるために助走をつけようとするイノシシの鼻はどこか既視感を感じるくらい異常に大きい。こんなやつどこで見たんだっけ…?


「……わっ!」


頭を悩ませてるうちにまたイノシシは木に突進した。


ちなみに夢主が言っているイノシシはこんな感じです(すごい既視感)。

prev / next

[ back ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -