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「いつになるのか、わかりませんけど…私が絶対にここから出しますから」
トリックタワーや試験場に使われたあんなところにラウさんをずっと居させないから。
いつになく真剣なその顔をずっとラウさんに向けるのはむず痒くて、少しの沈黙の後に堪えきれず笑ってしまった。これでラウさんには変な顔をされたのは言うまでもない。
「……雰囲気も糞もねぇな」
「私らしくていいでしょ?」
ケラケラ笑って茶化してみれば、そうだな、と呆れながらも笑うラウさん。私達二人には真剣な話を長く続けるのは困難に近いのだ(主に私のほうが、だが)。
しかしここから出すというのは本気で、冗談でも何でもない。さっき誓った言葉は、希望でも期望でも、況してや夢でもない。現実にすると決めたものだ。
「そういえばラウさん!ラウさんにどうしても伝えなくちゃいけないことがあるんですがこれ聞いて驚かないでくださいね!いや、驚いてくれたほうが私的には嬉しいですけど!」
「…いいから早く言えよ」
「実は私!ハンター試験に合格したんです!」
えへへーなんて言いながらまだ褒められてもいないのに褒められた子どものように照れた仕草で頭を掻いた。対してラウさんは驚いたというよりは固まっていた。アクションを忘れるくらいには。
「………それ、本当に言ってんのか?」
「なっ!疑ってるんですか!?ていうかそうじゃなきゃ私もここに入れなかったんですからね!?」
ズイッとラウさんの目の前にライセンスを突き出すと、ラウさんはそれをまじまじと見つめながら何故か眉間に皺が寄っていく。え?それおかしくね?
「………ハンター試験ってのはそんなに簡単なもんなのか」
「…小さい声で呟いたって聞こえてますからね?」
「わりぃわりぃ」
頑張ったな。そう言って伸びてきた手は私の頭に置かれて無造作に撫でられた。大きくて、温かいその手は、どこも変わってない。まともに褒めることのないラウさんは不器用に笑っていた。
「……ありがとう、ございます」
褒めてほしいとは思ったけど、予想した通りの褒め方だったけど、何故か目頭が少し、熱くなった。
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