Optimist | ナノ

「……さっきはすみませんでした。詳しく聞かせてください」


私が、なんとかしないと。
泣いても、喚いても、仕方がなかった。


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一度は取り乱したものの、このままいてもラウさんは帰ってこない。少しでも私が現状を把握してラウさんの冤罪を証明しなければ。そう思うと体は自然に動いていた。

カルロさんが言うには、ラウさんはまだ街の留置場にいるとのこと。捕まったのは私がハンター試験へ行って数日経ってからだったとか。前々から街の近くを殺人鬼がうろついていて、何人もの“女性の”被害者が出ていたらしい。

そう言えばラウさんも私をなるべく街に近付けないようにしていたような気もする。試験で電車に乗るために街へ行くと言ったときに少し困ったような顔をしていたことがあった。なぜそんな顔をするのかと疑問に思ったが、今思えば簡単なことだ。要は心配してくれていたんだと。それに、理由を言って止めようと思えばできただろうに、それをしなかったのは私を怖がらせないためだろう。…普段わかりにくいけど、いつだってあの人は優しいんだ。

しかし警察からすればおかしな話だろう。頭を悩ませていた連続殺人犯は捕まったというのに、相変わらず殺人は起こっているんだから。


「最近捕まった流星街の連続殺人鬼に会いたいんですが」
「部外者に会わせるわけにはいかない」


にっこりと頼んでみれば、一言で切られてしまった。これはカルロさんが言った通り。カルロさん達も私と同じようにここへやってきて会わせてくれと頼んだところ、会わせないと言われたらしい。まあ、この人達の私を見る目でわかるが、流星街の人を好きではないんだろう。嫌悪の感情がこちらに向けられていることはすぐにわかった。


「これでも駄目でしょうか?」


ちらり、まだ真新しいライセンスを男、警官の前に提示する。一瞬なんのことかと顔を顰めた警官はそれが何かを確認すると顰めて細くなっていた目を大きく見開いた。


「……どうぞ」
「ありがとうございます」


思ったより簡単に留置場へと続く廊下に通された。警官は何を思ったのか、先程のギスギスした態度から一変する。優しくなったとか、腰が低くなったわけではないが、突っ掛ってくるような態度はなくなった。その態度はこれほどまでにこの世界の警察は立場が低いのかという不信を生む。これでも彼らはこの小さな街を守る人達なんだろうに。

冷たいコンクリートに囲まれた廊下をカツンカツンと小さく音を立てながら進む。ラウさんは一番奥にいるらしく、それだけ説明を聞いた私は一人で行かせてくれと頼んだ。もちろん警官はいい顔をしなかったが、武器を一切持っていないことと、所持品がライセンスと金銭だけというのを確認すると渋々ながらも許可が下りた。長時間は許可できないと念を押して。

カツン、カツン。薄暗い廊下に響いていた音が止む。


「……ただいま、ラウさん」


下を向いて顔が見えなくても、その姿を間違えることはなかった。


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