Optimist | ナノ

「うん、念を覚えよう。特に絶と円をうまく扱えるようになって我が身を隠すしかない」


こいつ、既に存在がないくせにさらに隠れる気か?ふとそう思った。



09



「念ですか…うーん…強くなるための修行ですかね?」
「疑問形で返すなよ」


ナマエの言う“ねん”っつーやつがよく意味がわからないが、力で俺に勝てないのに、というか体力も碌にないのに強くなれるのか?やっぱこいつばかだな。思わず憐みの目を向けてしまう。


「あっ!その可哀想なものを見るような目はやめて!」


片手をバッと俺の方へ向け、まるでその目をやめろと言わんばかりのオーバーリアクション。んなことされたら余計にしたくなるぞ、お前。とにかく私は強くなるんです!ラウさんをも守れるくらいには!なんて言ってるが期待せずにいてやろう。

だけどこいつがただばかなだけではないことは俺も気づいてる。ナマエは要領がいい。言ったことは覚えるし、この流星街の説明をしたときも割とすぐに理解できていた。まぁ、それは10歳以下のガキでも出来ることではあるだろう。
それだけではない。今はそれこそばかな行動が目立つナマエだが、出会ったときは何を考えているのかわからないし、言葉を選ぶように話していた。――的確な質問、と言えばいいか。それは16のガキが考えれることではないような質問だって幾つもあった。まるで成人した大人を相手にしているような感覚だったのは確かだ。


「ラウさ〜ん?お〜い?」


俺が呆れすぎて黙っているとでも勘違いしたのか、ナマエは苦笑いで俺の顔の前で手を振っていた。はあ、と溜息がこぼれる。


「お前って馬鹿なの?」
「うっわ、急に何を言い出すかと思えば」


ナマエは心底心外そうな顔をしたので、お前はばかだよという意味を込めて肩をぽんぽんと叩いておいた。鼻で笑ってやるという特典付きで。


俺には家族と呼べるものがいない。今となっては、流星街のみんなが家族だといっても間違いではないが、血縁関係にあたる人物がこの世界にはいないのだ。ここに住んでいる多くの人がそうだろう。だからこそお互いの絆が深く、強い。

ナマエを見つけたとき、ああこいつも捨てられたのかと捨てられた頃の自分を思い出した。俺はもっと幼かったからあまり記憶に残っていないが、彼、カルロさんが俺を見つけてくれたとき俺はわんわんと大声を出して泣いていたことだけはしっかりと覚えている。若気の至り、と言ったものか。たまにそのことを引っ張り出されてカルロさんには恥をかかされたこともあったが、それはそれで楽しい思い出だった。

あいつにも、…ナマエにも、そういう気持ちになってほしい。言葉に出せばあいつは目が点になるくらいびっくりするかもしれない。もしくは具合が悪いのかと失礼なことを言い出すかもしれない。別にそれが嫌なわけじゃなくて、ただ単に恥ずかしいと思ってしまう俺の意地だ。

俺がもう少し歳を取って性格が丸くなったら話してやらないこともないな。


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