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念を覚えよう。そう思ったのは、ただ自分を守りたい一心だった。



08



この世界にきて1ヶ月くらいが経った。いつ元の世界に帰れるかもわからないし、もしかしたら帰れないかもしれない。だからラウさんから紙とペンをもらって今後起こること、登場人物などをできるだけ事細かにメモしていると、ふと思うことがあった。
ラウさんが言うには今は1988年らしい。私がラウさんと出会ったのは1988年1月7日。原作開始から11年前だ。ハンター試験の日かーなんかやだなー…、なんて一人呟いていたことを覚えてる。

そして、私がふと思ったことはというと、この世界に私が介入した時点で私の知るHUNTER×HUNTERではないんじゃないのか、ということ。私はこの世界の未来を知る、しかも原作を読んでた一ファン。それだけでかなりの異端児扱いだ。そうなると、もしかしたら未来は変わるかもしれない。最大で唯一のメリットが消える可能性だってある。
…それだけは本当に勘弁してほしい。


「となると、私が作中の人物に会わない限り話が大きく変わることはないのか?」


結論からいくとそうなるのかなあ。そもそも作中の人物に会いに行くなんて死亡フラグを自ら立てているようなものだ。あ、主人公組に会う程度なら殺されないかも?…いやいや別の意味で死ぬ。ただの通行人Aとかそういう立場で巻き込まれて死ぬに決まってる。
かといってこのまま行くと、蟻編で流星街にキメラアントが出現したはずだ。いくら12年後の話だとしても12年後もこの世界にいるとしたら確実な、死。今のままでは生き抜くことすらできないだろう。


「うん、念を覚えよう。特に絶と円をうまく扱えるようになって我が身を隠すしかない」
「ねんってなんだ?」
「!?ちょっ、脅かさないでくださいよ!」
「別に脅かしてなんかねーだろうが。お前が勝手に驚いたんだ、俺は悪くない。で、その“ねん”ってのはなんだ?」


あーラウさんって念のこと知らないのか。いや普通の人が知るわけないよね。
だからかわからないけどラウさんの言う念が平仮名に聞こえてくるんだけども、やだ、可愛い。なんて、考えてるせいか顔がニヤけていたらしくラウさんから頬を抓られた。この人イラッとするとすぐ頬抓るんだから…そのうち私の頬が千切れるぞ。


「念ですか…うーん…強くなるための修行ですかね?」
「疑問形で返すなよ」


うん、私もラウさんの立場だったらそう思うよきっと。


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