花のプレゼント | ナノ




昔ね、お前らのパパが花束を持ってきてくれたんだ。
まだお前らも生まれてなくて、パパと結婚もしていないとき。

花のプレゼント

その日は、パパと買い物に行く約束をしていたんだ。
サッカー関係で出会ってから、ずっと好きで。ようやく付き合えるようになってすぐだったな。
ママは楽しみで、約束の30分前には用意を終わらせて、家でそわそわしていたんだ。パパが迎えに来てくれるって言ってたからね。
でも約束の時間になっても来ない。
10分過ぎても来ない。
心配になってパパを迎えに行こうと玄関に向かったときに、インターホンがなった。
パパかな、って思ってさ。
急いでドアを開けたんだよ。
そしたら、やっぱりパパだった。
パパはドアの前で右手を背中に隠して、顔を真っ赤に染めて立っていた。
ママは「どうしたの?」って聞いたんだ。いつものパパは時間前に来てたし、顔は真っ赤じゃなく笑顔だったからね。
そしたらパパ、右手をママのほうに突き出してきてさ。
「これ、キヨにあげるよ」なんて真っ赤な顔で言うんだもん。
呆気に取られていたら、パパはなにか誤解をしたみたいで、言い訳を始めたんだ。
「えっと、遅れたのは寝坊とかじゃなくて……その、どの花がいいか悩んでいたら…」
そんなパパのことを見ていたらね。あぁ、この人は悩み抜いて花を買ってきてくれたんだな。そして、街の中をこの花束を持って歩いて来てくれたんだ。恥ずかしかっただろうな。って思ったら、なんだか凄く愛おしくなってさ。
パパの手から花束を受けとって出来うる限りの笑顔で「ありがとう」って伝えたんだ。
そしたらパパ、真っ赤な顔から笑顔になって、「どういたしまして」って。
パパを家に入れて、花瓶に花をいけたんだ。
その時になって、やっとどんな花だったのか気づいた。

鮮やかな色をした向日葵だった。

あとから気になって、花言葉を調べたんだ。
向日葵の花言葉は『あなただけを見つめる』。
これもあと知ったんだけどね、パパは花言葉を知っていて贈ってくれたんだって。
「俺の気持ちを伝えたかったんだ」って言ってた。
そんなことしなくても、直接言ってくれたらよかったのにな。

さ、この話はこれでおしまい。庭で遊んでおいで。


子供達が外へ遊びに出かけるのを見ていた清川に石浜が話し掛けてきた。
「なんの話しをしていたんだ?」
「うん。ハマが俺にくれた花束の話しをね」
「あのことか。恥ずかしいからもう辞めてくれよ」
そう顔を赤く染めながら言う石浜に清川は笑いかけた。
「やだ。俺嬉しかったんだもん。いつまでも言いつづけるよ!」

そこには子供達の笑い声と、楽しそうな夫婦の笑顔があった。


END.

キヨは、子供の前だと口調が柔らかくなります!
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