【サクセラ♀、ザキジノ♀/サクセラ♀は同棲している設定】
今日は珍しく、二人とも練習がない日だ。
ジーノは赤崎を家に呼び、二人は思い思いのことをして寛いでいた。
そこへチャイムがなる。
誰だろう。
ジーノは不思議に思いながらも、玄関へ向かった。
扉を開けると、そこには世良がいた。
俯いているためどんな表情かはわからないが、きっとなにかあったのだろう。
「どうしたの、セリー?」
ジーノが声を掛けると、世良は弾かれたように顔を上げた。
その顔は涙で濡れていて、まさか泣いているなんて思っていなかったジーノは慌てた。
「うえーん!王子ぃ…俺、堺さんに嫌われたかもしれないっス……」
「なにがあったのかはわからないけど、取り合えず上がってよ」
そう言い、世良を家の中に招き入れた。
勿論、そこには赤崎がいる。
赤崎もまた、泣いている世良を心配そうに見つめたあと、ジーノに話しかけた。
「どうしたんすか?この人」
「サックとなにかあったみたいなんだよね」
ジーノの口から堺の名前が出てきて、世良の身体はビクッと跳ねる。
「世良さん、言ってくれなきゃわかんないっすよ」
赤崎の言葉に顔を上げた世良はポツリポツリと話し始めた。
堺が料理をしているときに、我慢出来ず後ろから抱き着いたこと。
それに堺が注意をしたが、聞かなかったこと。
しまいには言い争いになり、「もういい。勝手にしろ」と堺に言われたこと。
話し終わると、世良はまたぽろぽろ涙を流しはじめた。
「俺、最近予定が合わなくて、久しぶりに二人でいれるから嬉しかっただけなのに」
ため息をつきながら赤崎が言う。
「それで出てきたんすか?」
「……だって」
「それをサックには言ったのかい?」
「言ってないっス」
ジーノは世良の頭をぽんぽんとしながら諭すように続ける。
「それを言わなければ、サックも何故セリーがそんな行動に出たのかがわからないだろう?それに彼が君のことを好きじゃないなんて、そんなことあるわけがないじゃないか」
だんまりを決め込む世良にジーノは続ける。
「今頃きっと、セリーを探しているんじゃない?」
迷う世良の背中を押すように、赤崎が続ける。
「うじうじしてないで、さっさと行動に出るのが世良さんだろ?」
決意したように、顔をあげ、世良は立ち上がった。
「……俺、行くよ。王子、ありがとうございました。赤崎もありがとうな」
そういって、ジーノの家を飛び出す世良。
早く、早く堺さんに会いたい。そして、どれだけ俺が堺さんと二人になるのを待ち望んでいたのかを伝えたい。
その一心で、出せうる限りの速さで走る。
その時、ばったりと息を切らした堺と出会った。
呼吸を整えきらないまま、堺は息を大きく吸い込んだ。
「こんの…、馬鹿!」
「す、すみません…」
「いきなり家を飛び出して心配したじゃねぇか!!」
「ごめんなさい……」
ようやく息が整った堺は、大きなため息を一つして世良に何故抱き着いてきたのか理由を聞いた。
さっき、ジーノの家で言ったことをまた繰り返す。
理由を聞いた堺は世良の頭に手を伸ばし、髪をぐしゃぐしゃにしながら「俺も、久しぶりで嬉しかったさ。だがな、料理のときは危ないからダメだ」
そう子供を諭すように言う堺の顔には、いつものしかめっつらからは想像もできないほどの優しい笑顔が浮かんでいた。
END.
(「全く、俺だって王子と二人きりは久々だってのに」)
(「フフッ。犬も食わぬなんとやらだね」)