花火 | ナノ
ハタカタバージョン


【花火】



二人になり、片山を見た畑は早速感想を口にした。

「カタ結構浴衣似合うんやなー」

「結構ってなんや!可愛いぐらい言ってみろや!」

畑の軽口にそう返す。
そんな片山は、黒地に紫の桜が満開に咲いている浴衣に、帯は白色という格好をしていた。髪は巻いた髪をポニーテールにし、蝶をモチーフにしたアクセサリーを絡めてある。

うん。結構どころかむっちゃかわええやん。
そう思った畑だが、余計なことは言わない。
真っ赤になった片山は見たいが、そのあとに挙動不振になってほしくないからだ。
だから、「そういう台詞は俺には似合わん」とだけ返しておいた。
片山も片山で、「ほうか」と言ったっきり。屋台を回ることに専念することにしたらしい。
畑と片山の二人はあてもなくふらふらと歩いていた。



興味を持ったものでだいたい遊び尽くし、目を引いたものを食べ終わったころ、周りの人達がざわめき出した。
そのとき、ドーン!と空になにかが打ち上がる音がした。
音に釣られて上をみると、空には色鮮やかな花が咲き誇っていた。

「花火か!」

「綺麗やなぁ」

「せやね。そういや、世良達が花火上がるとか言ってたなぁ」

そう話している間も、音が止むことはなく、逆に勢いをまして行っているようだ。
畑は隣の片山を見る。
久しぶりに会うからか、それとも浴衣の相乗効果か、記憶の中の片山よりも綺麗に見えた。
視線に気づいたのか、畑のほうをみる片山。
この空気ならさっき言うのを辞めた言葉が言えるかもしれない。そう思った畑は自分の素直な言葉を口にした。

「浴衣、似合っとる。可愛いで」

顔を真っ赤にした片山は感謝の言葉を口にし、畑に向かって微笑んだ。

夏祭りは終わりに向かっている。


END.
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